DD13のおはなし

文字数 1,132文字

 学生時代、ある同級生が、
「エワカ鉄道が…」
 などと言うので、
「コウジャク鉄道だよ」
 と偉そうに訂正して差し上げたことがある。
 漢字では「江若鉄道」と書く。
 その江若鉄道で思い出したことがある。

 江若鉄道には客車列車も貨物列車もあり、かつては国鉄と同じC11を持ち、それに引かせていたが、世は近代化の時代だということで昭和32年、ついにディーゼル機関車を新造した。
 これが汽車会社製で、どういう経緯かは知らないが、DD13の試作機となった。
 国鉄のDD13には試作機はいないが、なぜか江若鉄道のDD13がその役目を務めたということらしい。
 その割に、江若鉄道のDD13が国鉄線で試験をされたという話は聞いたことがない。

 江若鉄道のDD13は、DD1351と名付けられた。何かで読んだところでは、今後国鉄でDD13をいくら本格的に量産するとしても、
「まさか50両も作るまい…」
 という判断だったそうな。

 そうやってDD1351は、江若鉄道で客車や貨車をけん引していたのだが、使い勝手の良い機関車だったのだろう。昭和37年、江若鉄道はDD13をもう一両増備した。
 ここで江若鉄道にはDD13が2両、DD1351 と DD1352がそろったわけ。
 しかし江若鉄道は廃線になってしまう。江若鉄道の線路と同じルートに、国鉄が湖西線を建設することに決めたからだ。
 江若鉄道はその保証を受けることができたが、車両たちは他私鉄へと売られ、全国へ散っていった。

 DD1351は、兵庫県の別府鉄道へ。
 DD1352は、岡山県の岡山臨港鉄道へ譲渡された。

 ところが、ここからがおかしなことになってくる。これ以前から、岡山臨港鉄道にはすでに一両、DD13がいたのだ。
 岡山臨港鉄道自身が新造したものだが、それ以前からいたその他のロコたち(101、102、103)の後を追って、105と附番されていた。DD13105ではなく、ただの105である。
 そこへ、江若鉄道からDD1352がやって来たわけだが、そうなるとDD1352に合わせて、105を改番してやりたくなるのが人情というもの。
 105の新番号は、DD1351となった。

 ご存知の通り、当初の予想とは違って、国鉄DD13は量産を重ね、416両に達したほど。
 50両なんかとっくに超えている。
 もちろん国鉄にもDD1351は存在した
(若かりし日に車両配置表で確かめた記憶がある)。

 つまりこの頃、日本国内にはDD1351というロコが同時に3両存在していたわけ。

別府鉄道DD1351←江若鉄道DD1351

岡山臨港鉄道DD1351←岡山臨港鉄道105

国鉄DD1351

(なんということはありませんが、個人的には面白いトリビアだと感じたので…)
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