ロザ

文字数 516文字


 幼稚園か小学1年のころ、両親と一緒に鳥取へ旅行したことを覚えている。
 何かの列車に乗って出かけたのだが、ある駅で数分間停車したとき、父が「写真を撮ってやろう」と言い出した。
 それでホームへ出て、開いたデッキドアに寄りかかったポーズでシャッターを切ることになったのだが、私には気になることがあった。

「これはロザだよ? いいの?」

 もちろん私たちはハザの客だったから、そんなゴマかすようなことは嫌だったのだ。
 でも「かまやせんて」と父は言い、私はロザのドアで写真を撮られてしまった。
 この旅行のことで覚えていることは、他にはあまりない。
 砂丘を歩くと、靴の中に砂が入ってきて困ったこと。
 風によって砂上に描かれるせっかくの風紋が、観光客の足跡でほとんど踏み消され、荒らされてしまっていたこと。
 どこかの駅に止めてあったワムの連結器に触ってみたこと(ワム90000だったのが時代を感じるね)。

 古いアルバムを見ていたら、この時のロザの写真を見つけることができた。
 キロ28のようで、サボにはなんと「ちどり」と書いてある。
 木次線?
 神戸から鳥取へ行くのに、どうして「ちどり」で、どうして木次線だったのだろう。
 それはいまだにわからない。

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