鉄道研究会

文字数 863文字

 鉄研とはもちろん、鉄道研究会のこと。
 大学のクラブは上下関係が非常に厳しいと聞いていたので、私も加入する気は始めからなかった。それゆえ高校の鉄研の話。
 実は入学するまで、あの高校に鉄研が存在することさえまったく知らなかった。
 入学式の日に、校門で何やら新入生に配っている人がいる。
 私も一枚もらうと、ペラペラな紙製のキップのようなものだ。
『入学記念キップ』
 みたいなもの。ただし昭和時代のことだからコピーなんぞではなく、もちろんガリ版刷り。
 これが鉄研の人々で、私は早速加入を決めたが、聞いたところでは前年にできたばかりの全く新しい部で、実はまだ正式の部として認められておらず、だから同好会の扱いだということだった。
 その場で、
「入部したいです」
 と私がいうと、
「新入部員が一人おったぞー」
 髪の長い先輩が大騒ぎ。よほど人数が欲しかったらしい。
 こうやって高校1年の生活が始まったが、あるとき学校の図書館で鉄道関連の本を借りてみたら、写真の説明に間違いがあったらしく、誰かがボールペンで訂正してあった。
 この本にメモ用紙が挟まっているのを見つけて…

「鉄道に興味のある人は、〇〇年〇組の〇〇まで連絡を…」

 という内容だったが、すでに卒業してしまったのか、鉄研にはいない、知らない人の名前だった。
 鉄研の設立準備だったのかもしれない。
 いざ鉄研といっても、放課後に部室に集まってウダウダ言っているだけで、特に活動はない。
 ところがある日、新入生を集めて、部長がこんなことを言い出した。
 なんでも鉄道ファンの心得というか、3か条みたいなもので、この部長が後に新幹線の車内販売のアルバイトをし、例のこだま号の怪談を聞かせてくれた。
 で、その三か条。

(1)
夜間であっても、列車撮影にストロボは使うな。運転士の目がくらんで運転不能になり、列車が緊急停車する。

(2)
撮影のために線路のそばで列車を待つ時には、やって来た列車に対して片腕を高くまっすぐに上げ、「私は貴列車の接近に気づいていますよ」と必ず示すこと。

(3)
線路には絶対に入るな。

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