クーラー
文字数 1,244文字
181系電車やキハ82が、キノコ型クーラーを使用していたことは、よく知っている。
あの時代には、屋根上に乗せることができるクーラーはあの型しかなかったから。
(キノコ型クーラーというのが正式名称かどうかは置いておいて)
ところが、181系電車の交直両用バージョンが製造されるときになって、問題が生じた。
モハ480の屋根上には、交流機器やガイシやらが派手に並び、キノコ型クーラーを3つも並べるだけのスペースが取れなくなってしまったのだ。
だから仕方なく、屋根上のキノコ型クーラーは1・5個だけで我慢し、冷房能力の不足分は、床置き型のクーラーを新設計して乗せることにした。
それによりモハ480は、モハ181よりも定員が4名も減ってしまったが仕方がない。
しかし何年かして、モハ484の200番台が製造される頃には、新たな解決策が編み出されていた。
車両1両に1個だけで済む集中式クーラーの出現であります。
おかげでモハ484-200の定員はモハ181(68人)と同じに戻るどころか、どういう魔法を使ったのか、72人も乗せることができるようになった。
収益上は、非常にありがたい。
そして集中式クーラーは、103系や113系にも使用され、列車の冷房化率を押し上げていった。
ところがここで、ふと疑問がわくのである。
「お前、なんにでも疑問を持つやつだな」
という皆様のお声が聞こえそうですが、それはともかく、例えば103系なら、モハもクハも、サハもクモハも、みんな集中式クーラーを乗せることで冷房化を済ませてきた。
『だったらなぜ、481系においても、クハもサハも、サロもサシも、みーんな集中式クーラーにしてしまわなかったのだろう』
そうすれば屋根上がスカッとするのに。
量産効果もきいて、コストダウンができただろうに。
だけどそのうちに、国鉄がそうしなかった理由にハタと気が付いた。
「クーラーが故障した場合にどうするんや?」
まさにその一点であります。
例えば、キノコ型クーラーが3個載っているサハ481において、クーラーの1個が故障したとする。
さあ、どうするね?
いや、何も困ることはない。
故障した1個だけをカットして、残ったクーラーだけで粛々と営業運転を継続できるじゃありませんか。
ところがもしも、1両にただ1個しかない集中式クーラーが故障してしまったとしたら?
もう考えるだけで恐ろしい。
その車両は丸々一両が営業不能ということで、乗客は他の車両に移動してもらわなくてはならない。
そう考えれば、集中式クーラーを積んでいたモハ484-200とは、毎日つなわたりをしているような気分で営業していたのかもしれない。
「じゃあ逆に、103系や113系の場合に、1個しかない集中式クーラーが故障したとしたら?」
いえ、あわてる必要はありません。
当時、103や113には非冷房車がまだ山ほど走っていたので、クーラーをカットして窓を開け、非冷房車と同じ気持ちになって営業を続ければいいのです。