ぐぬぬ

文字数 1,318文字


 あまりにもチャチで、定員が小さくて使い道がなくて評価の低かった国鉄のレールバスであったけれど
(キハ01・02・03)、
他車に比べて、恵まれたところがなくもなかった。

 いえいえ、第3セクター私鉄向けの軽快気動車じゃなくて、もっとずっと以前、昭和30年代のお話。

 ローカル線のコストダウンを目指して、バスの部品を使ったキハを国鉄は設計したのだけど、やはり小さすぎてね…。

 結局は早々に戦列を離れたが、以下は全部私の想像ですよ。

「あー、このレールバスって奴ら、これから新造するのはいいが、なにもいいところがないな」

「そうですね。安いからバスの部品と言ったって、バス部品の耐用年数は、鉄道用部品よりもはるかに短いですから。それにね…」

「なんだい?」

「どんなローカル線でも、たまたま今日だけは小学校の遠足で団体客が来ているとか、そういう突発的な多客ということもあるわけでしょう? そんなのに対応できないですよ」

「そうだよな。閑散時は客が少なくても、朝と夕方に混む路線は多い。ラッシュ時用にキハ20を確保して、昼間だけレールバスを使っても、コストが二重にかかるだけ…」

 このように四面楚歌なレールバスちゃんたちだったのですが、そこはそれ、技術者たちにも親心があります。
 創造主の慈悲というやつでしょうか。

「あまりにも何もない状態で、このまま世へ送り出すのは忍びない」

 だから技術者たちは、レールバスに与えることにしたのです。
 誇れるものをただ一つ。
 誰にも負けないものをただ一つ。

「それを胸に秘め、きびしい鉄道人生をたくましく生き抜いてほしい」

 では、鉄道技術者たちがレールバスに与えたはなむけとは、いったい何だったのでしょう。

『こだま号(151系)と同じ塗色』!

 ああ、
「こいつは何を下らんことを言っとるんだ?」
 という皆様のお声が聞こえるようです。

 ところが実は、私なりに気が付いたことがあるのですよ。

 昭和33年に151系が登場する前、国鉄車両の塗色というのは、

「黒か茶、せいぜい湘南とスカ色」

 だけでありました。

 このほか、戦前から続く気動車用の青/灰、アオダイショウもありましたね。

 ここで私はハタと気が付いたのです。
 もしかしたら当時の国鉄は、

『いくら新時代とはいえ、華々しい塗色は特急列車にしか許さない。それ以外の列車は、寒色系か地味なものだけ許可する』

 という固い信念を持っていたのかもしれません。

 つまり、

「嬉しそうな塗色は特急以外ダメ」

 ということですな。

 にもかかわらず、それを与えられたレールバスたち。

 その例外的な塗色は、不遇人生フラグの立つレールバスたちへの、せめてもの親心的プレゼントだったのではないでしょうか。

 ちなみに、キハ01の製造は昭和29年。
 一般用キハの塗装変更(青/灰→一般色)は昭和34年でした。

 と、ここまで書いたところで大問題に気が付いた。

(1)
レールバスの塗色が本当に151系と同じであったかのソースがない。
頼みのウィキペディアにも書いてない。

(2)
レールバスの製造年が、あろうことか「こだま号」よりも『前』である。

 ぐぬぬ。
 これでは何一つ成り立ちません。
 放棄された仮説の一例ということで…
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