昭和

文字数 472文字


 昭和の鉄道風景は、現在とはいささか違っておりまして。
 みな地方線区で実際に見かけたことですが、

 おそらく定期券の所有者だろうが、改札口を通らず、道路の踏切からそのまま線路上を歩き、ショートカットしてホームに上がってしまうというのは、ときどき見かけた。
 ホームの端はスロープになっていて、フェンスも塀もないから邪魔するものはない。
 違反といえば違反だろうけど、古い国鉄駅は、線路のどちらか片側にしか入口がないことが多かったから、正規の道順で入場しようとすれば、相当な大回りになる場合がある。


 私の実家のことだが、帰省してきていた私たちが家に帰る時、祖母が駅まで見送りに来るのは、いつものことだった。
 ただその時、祖母が入場券を買うのを見たことがない。

「ちょっとお願いします」

 と頭だけ下げて改札口を通り抜けてしまう。
 どうなっているのだろうと思っていたが、入場券の代金はあとで支払っていたのだろうと気づいたのは後年のこと。
 あの頃の入場券は、きっと30円だったと思うが、そういうのんびりした取り扱いも、田舎だから可能だったのかも。
(つづきます)

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