駅そば

文字数 965文字


 大昔、鉄道ファンの友人から聞いた話。泊りがけの撮影旅行をするときの食事はどうするのか。
 とにかく若い人の口からは、「金がないから」という言葉しか出てこないのが常道でありゃんすが、それは鉄道ファンも同じこと。じゃあどうするのかと問えば、

「スーパーへ行って食パンを買ってきて、それをちょっとずつかじる」

 とのこと。ただ、

「それだけではあまりに味気ないので、味付けとしてマヨネーズも買って、それをつけながら食べる」

 という栄養学上問題のありそうなメニュー。
 私はそんなやり方はせず、旅行中の食事は「駅そば」で済ませることが多かった。
 だから南は覚えていないが、北は岩見沢駅のそばは食べたことがあるはず。
 これまでにいったい、何杯の駅そばを食したのか、もう見当もつかない。
 そばの味といえばよく言われるのは、

「東日本のそば汁は黒く、西日本のは透明に近い」

 とまあ、これは有名な話ですな。
 もう一つあるのは(これも有名かもしれないが)、

「東日本のそばには根深ネギが添えられているが、西日本のそばは当然のごとく葉ネギ」

 ただ私の近在では、根深ネギではなく、東京ネギと呼ぶ。初音ミクが持っているやつね。(関西の葉ネギは柔らかすぎて、手に持って振り回すことができない)

 アメリカへ旅行した時、スパゲッティにネギの刻んだのが入っていて、へえと思い、

「これはなんと呼ぶのか?」

 と店の人に質問したら、答えは、

「グリーンオニオン」

 とのこと。文字通りに玉ねぎの頭ですな。
 そういえば一度、私は駅そばで救われたことがある。
 昭和時代の盆・正月というのは、現在とはかなり違っていた。
 まず第1に、町中の商店がまったく営業していない。
 みな盆休み・正月休みを取っているのだから。
 コンビニなんてものは、まだ発明されていない。
 ファーストフードの店も存在しない。
 その盆シーズン、両親はそろって帰省しており、家の中には私一人だった。
 そして気が付くと、家の中には何も食い物がないのだった。
 私のような無精者が米を炊いたりするはずもなく、フラフラと町へさまよい出た。
 ところが、どの店もこの店もみんな閉じているではないか。
 あちこち歩きまわって、やっと見つけたのが、某駅のそば屋さん。

「ああ、やっと食物にありつけた…」

 〇〇そば様、あの時はお世話になりました。
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