ごみ
文字数 482文字
列車の車内にゴミ箱が設置されるようになったのは、東海道新幹線からではないかと思う。
いま151系の形式図をざっと眺めたが、ゴミ箱は描かれてはいないようだ。
私が幼児だった頃のことだが、それでもいまだに録音のように耳に残っているのが父の発言である。
おそらく神戸から広島へ帰省する途上のことだろう。特急しおじの車内で駅弁でも食べて、ゴミが出たのだろう。
「ゴミはこうやって、イスの下へ置くんや」
(広島人なのに、微妙に関西弁が混じる人である)
ここでいうイスの下とは、腰かけている時のかかとの後ろあたりのことである。本当に父は、それが正しいマナーであるかのように言ったから、私もすぐに納得してしまった。
他の乗客たちもみな同じように、そこにゴミを置いていたと思う。
そんなことをして、列車が長距離を走ると当然、ゴミがたくさんたまってくるが、ならどうするのかというと、心配ご無用。
停車時間の長い大きな駅で清掃係が乗り込んできて、ほうきを使って、あっという間にゴミを運び去ってキレイにしてしまう。
当時のそういう駅には、ゴミを処理するための焼却炉が設置されていたと思う。