連結シーン

文字数 614文字


 50年近く前の出来事だから、もう時効(?)だろう。
 ある駅のホームに、客車が1両、留置されていた。
 これからロコが連結されて、列車として発車するのだが、まだロコは来ていない。
 車内に乗客はまばらで、私もその一人だったが、他に乗っているのは子供ばかりで、車内やホームを走り回って遊んでいる。
 そのうちの一人が手ブレーキのハンドルに興味を持ち、なにげなくカラカラと回してしまった。
「まずいな」と私は思ったが、特に何も行動は起こさずじまい。
 そのうちにロコがやって来て連結することになったが、駅員がうっかりして、解放テコをガチャンとやったのはいいけれど、自連のナックルを開くのを忘れていた。
 だから連結しようとしても連結できず、客車はドンと押される形になった。
 しかし先ほどの子供のおかげで、手ブレーキは緩んでしまっている。
 どうなったかって?
 もちろん客車は動き始めたさ。
 そこで私が登場する。
 とっさに手ブレーキに取り付き、サッと回したとしたらどうだい?
 実際にそうだったのだが、キキッと停車した客車にあわてて乗り込んできた駅員は、手ブレーキの前にいる私を見て事情を理解したのだろう。
「よう」と手をあげて、それでおしまい。
 私は大げさに話してますかね? その時ホームにいた人の話では、客車は本当に1メートルほど動いたそうでしたがね。
(いま気が付いたのですが、もしもあのまま客車が逸走していたら、その先には公道の踏切があったよ…)
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