父と娘 1

文字数 1,110文字

 ムツヤ達は騒然としている街を抜けてホテルに帰っていたが、戻るなりモモが言った。

「申し訳ありません、しばらく1人で考えさせて頂けませんか?」

 その言葉を受けて、ルーも女子部屋からムツヤ達の部屋へやってきていた。

 ユモトに淹れさせた紅茶を飲んで、クッキーをモシャモシャと食べている。

 ムツヤはヨーリィに魔力を送りながら、ユモトはソワソワしながらモモの心配をしている。

「まさか、モモさんがお父さんとあんな形で再開するなんて……」

「反乱軍だもんねー」

 ユモトの言葉にルーはため息をついた。

「モモさん大丈夫でしょうか」

「大丈夫……。ではないでしょうね」

「そうでずよね」

 ムツヤもどうして良いのか分からず下を向いた。

「モモちゃんってお母さんが居なくて、今はお父さんが唯一の親御さんでしょ? そりゃショックよね」

「でしょうね……」

 ユモトは自分自身とモモを重ね合わせて考えていた。

 自分も母親がもう居ない。それで唯一の親である父とあんな形で再開を果たしたらと思うと……

「こればかりはモモちゃんが気持ちの整理をつけるまで待つしか無いわよね」

「えぇ、そうですね」

 そこまで言うとルーはベッドに倒れ込んで言った。

「考えてても仕方ないから私は寝る!! 疲れた!!」

 そんなルーを見てユモトは笑っていたが、次の瞬間。

「はっ、か弱い少女が2人、密室、飢えた野獣。何も起きないはずがなく……」

「何も起きませんよ!!!」

 モモは1人ベッドに腰掛けてうなだれていた。やっと会えた父がまさか国へ剣を向けるなんて。

 キエーウを倒して、人間と亜人が仲良く生きていける未来を想像していたのに、今度はこんな事になるなんて。

 悔しさと虚しさで涙が一筋出てしまった。私はどうすれば良いのだろう。

 そんな時、部屋のドアが開いて誰かが入ってきた。アシノだ。

「あれ、モモお前だけか?」

 部屋を見渡してルーが居ないことに気付くとアシノは言う。

「えっと、その」

「この非常事態に……。またどこか遊びにでも行ったか?」

「ち、違うんです。私がしばらく1人で考えさせてほしいと言って、それで!!」

 ルーの名誉を守るためにモモが言うとアシノは「あー……」っと声を出した。

「そうだったか、それは悪かった」

「いえ、良いんです」

「1人で考えたいって言ってる所悪いが、1人で考えるとろくな結論にならないぞ。特に疲れている時は、だ」

「えぇ…… そうですよね」

 モモはそう言ってうつむく。

「あいつ等は、馬鹿が多いが、悪い奴らじゃない。話せば何かスッキリするかもしれないぞ」

「わかりました」

「先にあっちの部屋に行っている。来たくなったら来ればいい」

「はい」

 モモは無理に作った笑顔でアシノを見送る。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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