水面下 1

文字数 1,391文字

「ふぅー。今日で2つ回収っと」

 とある街の宿でルーがベッドに倒れながら言った。

「あぁ、後どれぐらいあるんだろうな」

 アシノもやれやれといった感じだ。定期連絡の時間なので、長距離用連絡石で他の勇者達とギルスに連絡を入れる。

「大丈夫みたいだな、ムツヤ頼む」

「はい!」

 ムツヤは、カバンから取り出した赤い玉を壁にぶつけた。

「アシノせんぱーい!! こんばんはー!!」

 画面越しにも抱きつこうとするのは、アシノの後輩勇者であり、風魔法を使う剣士、勇者サツキだ。

「アシノさん、今日もお疲れさんです」

 もう一人の男は、故郷を失った叩き上げの勇者。イタヤ。

「こんばんは、アシノさん」

 国へ反旗を翻したが、事情がありアシノ達と停戦協定を結んでいる。元勇者トチノハ。

「どーもー、勇者の皆さん」

 そして最後に、研究者であり、アシノ達の旅のサポートをしているギルスだ。

「こんばんは、皆さん。今日も状況の報告をお願い致します」

 アシノが言うと、イタヤが手を挙げた。

「じゃあ俺から行こうかな。裏の道具は2つ回収しました。それで、気になる噂があったんですけどね」

「気になる噂ですか?」

「えぇ、何でも行商人のキャラバンが壊滅させられたって話でして」

 行商人が襲われることは、悲しい事だがそんなに珍しい話ではない。

「何でも、生き延びた人が言うに、空を飛ぶ人間が一人で襲ってきたと」

 それを聞いてアシノ達は嫌な予感がした。

「また、魔人ですか……」

「えぇ、恐らくは」

 イタヤも肩をガックリさせて言う。

「分かりました。次は……」

「はいはい!! 私からも良いですか?」

 サツキが声を上げるのでアシノが尋ねた。

「なんだ?」

「王都に今日入った情報なんですけど、一週間前にレイード地方の貴族の城が襲われたって話です」

「貴族の城が?」

 魔神ラメルも同じことをしていたので、またアシノが険しい顔をする。

「えぇ、何でも生き残ったメイドさんの証言では『魔物の群れがいきなり襲いかかってきた』そうです。その後、人間が大勢来て城を占拠したとかで」

「魔物の群れか……、また魔人関係か……」

 アシノは目を閉じて厄介だなと考えていた。最後にトチノハが現状報告をする。

「私からは、魔人に繋がるような情報はありません。裏の道具を3つ回収したぐらいですかね」

「分かりました。ギルス、この話を聞いてどう思う?」

 アシノはギルスに質問をした。

「そうだね、キャラバンを襲った魔人らしき者と、貴族の城を襲った者。何らかの繋がりはあるんじゃない?」

「まぁ、だろうな」

 うーんとアシノは考える。

「私達はレイード地方へ向かってみようと思います」

「そんな! アシノ先輩一人で危ない場所になんて行かせられません!! ここは私も……」

「お前は王都を守ってろ」

 アシノに一蹴されサツキは不満そうだった。そんなやり取りを見てイタヤは「はっはっは」と笑う。

「魔人だとしたらムツヤの力が必要だ」

「私も同行しましょうか? もちろん影からですが」

 トチノハがそう名乗りを上げた。アシノは頷く。

「魔人だとしたら戦力が多い方が良い。よろしくお願いします」

「えぇ、信用して下さりありがとうございます」

 イタヤも自分に何が出来るか考え、口に出す。

「俺はもっと情報を集めて、アシノさんがヤバそうになったら応援に行きますよ」

「助かります」

 その後、取り止めない話を数回して今日の定例会議は終わった。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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