剣を握る資格は 2
文字数 1,643文字
見晴らしの良い小高い丘に2人はやってきた。カバンから取り出した青いシートを敷いて2人は座る。
「私は、狩人であり戦士ですが、まだ人を殺めたことはありません」
人を殺す話題が出てムツヤは一瞬ビクリと緊張した。
「ですが、狩人として始めて獲物を狩った時のことは今でも覚えています」
モモは優しい表情のまま遠くを見つめている。
「私が8歳の頃です、長い棒きれを持って、それを投げてうさぎを狩りました」
ムツヤは黙ったままだが、真剣に聞いていた。
「当てた時はやったと達成感がありました。そして、近づいてみるとうさぎは口から血を流してピクピク痙攣していました」
モモは思い出すように空を見上げる。
「その時です、初めて自分の手で大きな生き物を殺してしまったという実感が湧いた時、急に怖くなってしまったんです」
そしてモモは三角座りのまま、うずくまるように顔を伏せた。
「一緒に居た父はナイフを私に持たせてうさぎを捌くように言いました。でも私は泣いてしまい、嫌だ嫌だと言っていました」
「その時始めて父に叩かれました。そして言われたのです『獲物に対して最後まで責任を取らないならば、殺す資格は無い』と」
「それで、モモさんはどうしたんですか?」
ムツヤはモモの方を見て聞いてみる。するとモモも目を合わせて話し始める。
「涙は止まりませんでしたが、うさぎは捌いて夕飯のシチューになっちゃいました」
フフッとモモは笑っていた。辛い話なのにつられてムツヤも少し笑ってしまう。
「俺は…… 俺は初めて倒したのは倒すと煙になる魔物だったんで、そういう事は思ったことがありませんでした」
「そうですか」
モモはまた遠くを見つめ、決意をして言う。
「私は、今後ムツヤ殿に…… いえ、仲間に危険が及んだ時は迷わず人を斬る覚悟をしています」
「……モモさんは、強いんですね」
「いいえ、私は強くなんて無いです。大切な仲間を失うのが恐いだけです」
「仲間……」
モモはふと立ち上がりうーんと背伸びをした。
「もうそろそろ帰りましょうか、ムツヤ殿」
モモは笑顔で手を差し伸べてきた。
それをムツヤは握って立ち上がる。
「忘れないで下さい、私はどんな時だって、どんな事があったって、ムツヤ殿の味方です」
モモとムツヤの2人は森を出て家へと帰った。
家の前ではユモトとヨーリィが修行をしている。
「あ、おかえりなさい」
ユモトは笑顔で2人を迎えた。そんなユモトにヨーリィはタッと近づいて首元に木の杭を向ける。
「ユモトお姉ちゃん、訓練中に気を抜かない」
「あー、ごめんね、でもお姉ちゃんじゃないからね?」
いつも見ているようなやり取りをモモは笑って見ていた。そして家に入り、居間へと向かう。
「おー、若人諸君おデートはどうだったかな?」
居間ではルーがソファに寝転がりながら探知盤を眺めていたが、視線を逸して2人に声を掛ける。
「る、ルー殿、別にデートというわけでは!! ただの散歩です」
「さーんぽにしてはー? ちょっと遅かったんじゃない?」
ルーは相変わらずニヤニヤとして言った。
「その辺にしておけ」
アシノはルーの頭を押さえつけると、ルーは「ふべちっ」と変な声を上げる。
「ギルスの姿が見えませんが」
「ギルスなら地下でけんきゅーちゅー、私はきゅうけーちゅー」
クッキーをモゴモゴと食べながらルーは話した。そして飲み込むとソファから立ち上がりうーんと背伸びをする。
「モモちゃん、次は私とおデートするわよ!! 特訓よ特訓!!」
ルーは意味ありげにウィンクをして、モモは何かを悟り返事をした。
「わかりました、よろしくお願いします」
ルーとモモは外へ出て、部屋にはムツヤとアシノの2人きりになる。
気まずい沈黙がしばらく続いたが、ムツヤがそれを破った。
「アシノさん、その……」
「なんだ?」
ソファに座って紅茶を飲みながらアシノは答える。
「その、えっと」
「ハッキリと言え」
ムツヤは固唾を飲んで絞り出すように言った。
「アシノさんは…… 人を…… 斬ったことがありますか?」
「私は、狩人であり戦士ですが、まだ人を殺めたことはありません」
人を殺す話題が出てムツヤは一瞬ビクリと緊張した。
「ですが、狩人として始めて獲物を狩った時のことは今でも覚えています」
モモは優しい表情のまま遠くを見つめている。
「私が8歳の頃です、長い棒きれを持って、それを投げてうさぎを狩りました」
ムツヤは黙ったままだが、真剣に聞いていた。
「当てた時はやったと達成感がありました。そして、近づいてみるとうさぎは口から血を流してピクピク痙攣していました」
モモは思い出すように空を見上げる。
「その時です、初めて自分の手で大きな生き物を殺してしまったという実感が湧いた時、急に怖くなってしまったんです」
そしてモモは三角座りのまま、うずくまるように顔を伏せた。
「一緒に居た父はナイフを私に持たせてうさぎを捌くように言いました。でも私は泣いてしまい、嫌だ嫌だと言っていました」
「その時始めて父に叩かれました。そして言われたのです『獲物に対して最後まで責任を取らないならば、殺す資格は無い』と」
「それで、モモさんはどうしたんですか?」
ムツヤはモモの方を見て聞いてみる。するとモモも目を合わせて話し始める。
「涙は止まりませんでしたが、うさぎは捌いて夕飯のシチューになっちゃいました」
フフッとモモは笑っていた。辛い話なのにつられてムツヤも少し笑ってしまう。
「俺は…… 俺は初めて倒したのは倒すと煙になる魔物だったんで、そういう事は思ったことがありませんでした」
「そうですか」
モモはまた遠くを見つめ、決意をして言う。
「私は、今後ムツヤ殿に…… いえ、仲間に危険が及んだ時は迷わず人を斬る覚悟をしています」
「……モモさんは、強いんですね」
「いいえ、私は強くなんて無いです。大切な仲間を失うのが恐いだけです」
「仲間……」
モモはふと立ち上がりうーんと背伸びをした。
「もうそろそろ帰りましょうか、ムツヤ殿」
モモは笑顔で手を差し伸べてきた。
それをムツヤは握って立ち上がる。
「忘れないで下さい、私はどんな時だって、どんな事があったって、ムツヤ殿の味方です」
モモとムツヤの2人は森を出て家へと帰った。
家の前ではユモトとヨーリィが修行をしている。
「あ、おかえりなさい」
ユモトは笑顔で2人を迎えた。そんなユモトにヨーリィはタッと近づいて首元に木の杭を向ける。
「ユモトお姉ちゃん、訓練中に気を抜かない」
「あー、ごめんね、でもお姉ちゃんじゃないからね?」
いつも見ているようなやり取りをモモは笑って見ていた。そして家に入り、居間へと向かう。
「おー、若人諸君おデートはどうだったかな?」
居間ではルーがソファに寝転がりながら探知盤を眺めていたが、視線を逸して2人に声を掛ける。
「る、ルー殿、別にデートというわけでは!! ただの散歩です」
「さーんぽにしてはー? ちょっと遅かったんじゃない?」
ルーは相変わらずニヤニヤとして言った。
「その辺にしておけ」
アシノはルーの頭を押さえつけると、ルーは「ふべちっ」と変な声を上げる。
「ギルスの姿が見えませんが」
「ギルスなら地下でけんきゅーちゅー、私はきゅうけーちゅー」
クッキーをモゴモゴと食べながらルーは話した。そして飲み込むとソファから立ち上がりうーんと背伸びをする。
「モモちゃん、次は私とおデートするわよ!! 特訓よ特訓!!」
ルーは意味ありげにウィンクをして、モモは何かを悟り返事をした。
「わかりました、よろしくお願いします」
ルーとモモは外へ出て、部屋にはムツヤとアシノの2人きりになる。
気まずい沈黙がしばらく続いたが、ムツヤがそれを破った。
「アシノさん、その……」
「なんだ?」
ソファに座って紅茶を飲みながらアシノは答える。
「その、えっと」
「ハッキリと言え」
ムツヤは固唾を飲んで絞り出すように言った。
「アシノさんは…… 人を…… 斬ったことがありますか?」