囚われの田舎者 7

文字数 1,233文字

「さぁ、みんな寄ってらっしゃーい。見てらっしゃーい!!!」

 城の西側で大きな声がしている。

「なんだ?」

 見回りに来た私兵が気付いてその声のする方へ向かった。

「ほらほら、良い子のみんなー! 幸せ屋さんだよー!」

 ルーが道端に物を広げて商売をしていた。

「貴様、何をしている」

「私は幸せ屋さん。皆が幸せになれる物を売っているよ!!」

「お姉ちゃん、このひよこなーにー?」

 子供が指をさしてルーに尋ねる。

「おぉ、良いものを見つけたね。このひよこは幸せの青いひよこだよ」

「青いひよこ?」

 聞き返されると頷いてルーは答えた。

「そう、青い鳥は幸せを呼ぶのよ」

「ちょっと待てお前…… これ、カラーひよこじゃ……」
 ※知らない人は大人の人に聞いてみてね!

 私兵が言うのをスルーしてルーは商品説明を続ける。

「お次はこれよ!! この小さなおもちゃはお湯に入れるとあら不思議!! 20倍に膨らんじゃうわ!!」

「ほんとにー?」

「えぇ、そうよ。これが膨らむと共に幸せも膨らむのよ。お魚やカニ、こっちはドラゴンの奴もあるわよ!!」

「幸せ関係なくね?」

 私兵の言葉にルーはため息を付く。

「お客さん、営業妨害はやめてくれませんかね?」

「何が営業妨害だ!! っていうかお前の売ってるものなんか妙に懐かしいんだよ!!」

 私兵が言うと、ルーはゆっくりと言葉を返した。

「お客さん、あなた大人になるにつれて『小さな幸せ』を見付けることが出来なくなったんじゃないのかしら?」

「何だと!?」

「小さな頃は光る石も、道路の動くアリも、全てが不思議に見えた。そこら辺の木の枝も落ち葉も宝物だった」

 ルーは続けて言う。

「大人になるにつれ、小さな宝物を無くしていくのは仕方がないわ」

 ルーは手を広げて話し続ける。

「だけど、心の小さな宝物まで無くしちゃうのは悲しいと思わない? 私は、そんな大人たちに小さな宝物を」

「これくださーい!!」

 子供が言うとルーは笑顔になって近くまで駆け寄った。

「はいはい、ありがとー!! 20バレシだよー!!」

「わーい!!」

 咳払いをしてまた私兵の方を向いてルーは言う。

「私はそんな大人たちに小さな……」

「これってなにー?」

「はいはい、これは下の棒を持って振ると紙が伸びちゃうのよ!!」

「すごーい!!」

 また咳払いをしてルーは私兵を見据えて言う。

「私は、そんな大人たちに小さ」

「これちょうだい!!」

「はいはいはい、ありがとう!! 20バレシね!!」

「わーい!!」

 またまた咳払いをして私兵を見てルーは言う。

「私は、そんな大人たちに」

「もういいわ!! 何回おなじ所繰り返してるんだよ!!」

 私兵は、それはもうブチギレていた。

「何回もおなじ所を繰り返すなんて、まるで壊れかけのレデ」

「黙れ、とにかくここから立ち去れ!!」

「仕方ないわね、眠ってもらうわ!!」

 ルーは売り物に紛れ込ませておいた吹き矢を咥えて私兵を打った。

「いてっ!! なにす……」

 私兵は眠りに付く。

「さーて、ムツヤっちは無事かしらね―?」
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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