偽装工作 3
文字数 1,893文字
そう、ベッドの上に横たわるギルスは裏の道具の『握ると自分の人形を作り出す玉』で作ったデコイだ。
人形と言っても精巧に作られているため、死体だと言われれば見分けがつかない程であった。
ルーの精霊に囲まれた時、その内の1体が地中に穴を掘り、デコイを作ってからそこにギルスは隠れたのだ。
デコイは2時間ほどで消えてしまうが、キエーウを騙すには充分な時間であった。
ギルドの応接室にムツヤ達向かう。
そして、ギルドマスターであり、アシノの祖父であるトウヨウに今後の作戦を詳しく話していた。
その最中、部屋にノックの音が響く。
「入れ」
ギルドの中で最も口の堅いベテランの受付嬢が失礼しますと扉を開け、その後ろにはギルスが居る。
「あらー、アンデットかしら?」
「アンデットみたいな生活しているお前に言われたくないわ」
皮肉を返してギルスは応接室へと入った。
「ギルス、ご苦労だったな」
「いえ、大した事はありませんよ」
トウヨウに言われ、ギルスはそう返す。
「明日お前の葬式を行って、それで死んだことになるが、店はどうする?」
アシノに聞かれると、ギルスは「あぁ」と言って返答する。
「俺は本来、研究員志望だからな。裏の道具を研究できるってんならそっちが優先だ。常連さんには悪いが、店のものはギルドに寄付するって形で」
「良いのか、それで」
トウヨウに聞かれ、ギルスはまた答えた。
「俺は喧嘩別れで遠い故郷を飛び出したんで、身寄りがない様なものですから」
「そうか」と言ってトウヨウは頷く。
「お前の店が無くなったら、私達は困るが仕方がないな」
モモは少し残念そうに言うと、ギルスは笑顔を作る。
「そう思ってもらえただけ、店の店主としては嬉しいよ。でもこれから俺はギルドにこもって、裏の道具の研究をしながら君たちのサポートをする」
「つまり、店主から引きこもりにジョブチェンジってわけね」
「引きこもり生活しているお前には言われたくないな」
ギルスとルーは軽口を叩きあっていた。
ムツヤ達は家へと帰った。ギルスの妨害魔法が無く、盗聴の恐れがあるので、まだギルスが死んだという設定で過ごす。
だがそれは、結構楽なものであった。
ただ会話をしなければ落ち込んでいる。悲しんでいる風を装えるので、ムツヤ達は黙って部屋で大人しくしたり、ソファに座ったり、地下にこもったりとしている。
最小限の会話だけをしてその日は過ごした、そして夜はルーが探知盤の監視、夜明けからはユモトが交代していた。
「行くぞ」
朝の支度を終えると、アシノが短く言った。みんな無言で頷いてスーナの街を目指し、歩き始める。
街へ着くとギルドの中へと入った。ギルスの訃報と、ギルドで葬儀を行うことは昨日の内から知らされていたので喪服を着ている人物がチラホラといる。亜人が多いのはギルスの店で世話になったからだろう。
「お待ちしておりました」
例の口の堅いベテランの受付嬢がムツヤ達をギルドの奥へと案内する。小さな会議室で男女別に用意されていた喪服に着替えて、応接室に行く。
「よう、みんな俺の葬式によく来てくれた」
ギルスとギルドマスターのトウヨウが座って待っていた。
「アンタの葬式なんて実際にあったら行かないけどね」
ルーはギルスにそう返した、ハハハとギルスは笑う。
「昨日、俺が死んだって泣いてたのは誰だっけ?」
「あんなもん、唐辛子をちぎった手で目をこすっただけよ。良い子は真似しちゃダメよ!」
「それにしても、何か、これからお葬式をする人と話すってのは変な気分ですね」
ユモトは苦笑いをして言う。
「あぁ、俺も今から自分の葬式が始まるって考えると妙な気分だよ。参加者は結構いたかい?」
「亜人の参加者が多かったぞ、多分客だった連中じゃないか?」
モモが言うと「そっか」と答えてギルスは複雑な気持ちになった。
「誰かが俺の店みたいな事をやってくれりゃ良いんだがな」
「お喋りはここまでだ、じいちゃんの話を聞くぞ」
「おぉ、失礼しました」
アシノが言うと全員ソファに座ってトウヨウの話を聞く。
「ギルスの偽の遺体は先程作った、そして地下に探知盤を広げて置く部屋も確保した。そこでしばらくギルスには生活してもらう」
「ようこそ地下の民へ」
ルーが言うと「黙って話を聞け」と言われながらアシノに頭を叩かれていた。
「ギルスの身の回りの世話や、探知盤の監視は24時間体制で俺の信頼のおける者たちに任せようと思うが、良いな」
「はい、お願いします」
ルーは打って変わって真面目な返事をする。
「信頼の置ける方たちってどなたですか?」
ユモトが不思議そうに言うとトウヨウは「入れ」と言い扉が開いた。
人形と言っても精巧に作られているため、死体だと言われれば見分けがつかない程であった。
ルーの精霊に囲まれた時、その内の1体が地中に穴を掘り、デコイを作ってからそこにギルスは隠れたのだ。
デコイは2時間ほどで消えてしまうが、キエーウを騙すには充分な時間であった。
ギルドの応接室にムツヤ達向かう。
そして、ギルドマスターであり、アシノの祖父であるトウヨウに今後の作戦を詳しく話していた。
その最中、部屋にノックの音が響く。
「入れ」
ギルドの中で最も口の堅いベテランの受付嬢が失礼しますと扉を開け、その後ろにはギルスが居る。
「あらー、アンデットかしら?」
「アンデットみたいな生活しているお前に言われたくないわ」
皮肉を返してギルスは応接室へと入った。
「ギルス、ご苦労だったな」
「いえ、大した事はありませんよ」
トウヨウに言われ、ギルスはそう返す。
「明日お前の葬式を行って、それで死んだことになるが、店はどうする?」
アシノに聞かれると、ギルスは「あぁ」と言って返答する。
「俺は本来、研究員志望だからな。裏の道具を研究できるってんならそっちが優先だ。常連さんには悪いが、店のものはギルドに寄付するって形で」
「良いのか、それで」
トウヨウに聞かれ、ギルスはまた答えた。
「俺は喧嘩別れで遠い故郷を飛び出したんで、身寄りがない様なものですから」
「そうか」と言ってトウヨウは頷く。
「お前の店が無くなったら、私達は困るが仕方がないな」
モモは少し残念そうに言うと、ギルスは笑顔を作る。
「そう思ってもらえただけ、店の店主としては嬉しいよ。でもこれから俺はギルドにこもって、裏の道具の研究をしながら君たちのサポートをする」
「つまり、店主から引きこもりにジョブチェンジってわけね」
「引きこもり生活しているお前には言われたくないな」
ギルスとルーは軽口を叩きあっていた。
ムツヤ達は家へと帰った。ギルスの妨害魔法が無く、盗聴の恐れがあるので、まだギルスが死んだという設定で過ごす。
だがそれは、結構楽なものであった。
ただ会話をしなければ落ち込んでいる。悲しんでいる風を装えるので、ムツヤ達は黙って部屋で大人しくしたり、ソファに座ったり、地下にこもったりとしている。
最小限の会話だけをしてその日は過ごした、そして夜はルーが探知盤の監視、夜明けからはユモトが交代していた。
「行くぞ」
朝の支度を終えると、アシノが短く言った。みんな無言で頷いてスーナの街を目指し、歩き始める。
街へ着くとギルドの中へと入った。ギルスの訃報と、ギルドで葬儀を行うことは昨日の内から知らされていたので喪服を着ている人物がチラホラといる。亜人が多いのはギルスの店で世話になったからだろう。
「お待ちしておりました」
例の口の堅いベテランの受付嬢がムツヤ達をギルドの奥へと案内する。小さな会議室で男女別に用意されていた喪服に着替えて、応接室に行く。
「よう、みんな俺の葬式によく来てくれた」
ギルスとギルドマスターのトウヨウが座って待っていた。
「アンタの葬式なんて実際にあったら行かないけどね」
ルーはギルスにそう返した、ハハハとギルスは笑う。
「昨日、俺が死んだって泣いてたのは誰だっけ?」
「あんなもん、唐辛子をちぎった手で目をこすっただけよ。良い子は真似しちゃダメよ!」
「それにしても、何か、これからお葬式をする人と話すってのは変な気分ですね」
ユモトは苦笑いをして言う。
「あぁ、俺も今から自分の葬式が始まるって考えると妙な気分だよ。参加者は結構いたかい?」
「亜人の参加者が多かったぞ、多分客だった連中じゃないか?」
モモが言うと「そっか」と答えてギルスは複雑な気持ちになった。
「誰かが俺の店みたいな事をやってくれりゃ良いんだがな」
「お喋りはここまでだ、じいちゃんの話を聞くぞ」
「おぉ、失礼しました」
アシノが言うと全員ソファに座ってトウヨウの話を聞く。
「ギルスの偽の遺体は先程作った、そして地下に探知盤を広げて置く部屋も確保した。そこでしばらくギルスには生活してもらう」
「ようこそ地下の民へ」
ルーが言うと「黙って話を聞け」と言われながらアシノに頭を叩かれていた。
「ギルスの身の回りの世話や、探知盤の監視は24時間体制で俺の信頼のおける者たちに任せようと思うが、良いな」
「はい、お願いします」
ルーは打って変わって真面目な返事をする。
「信頼の置ける方たちってどなたですか?」
ユモトが不思議そうに言うとトウヨウは「入れ」と言い扉が開いた。