下剋上 12

文字数 910文字

「ナツヤはこれからどうするの?」

 赤い日差しを浴びてフユミトは尋ねる。

「俺は……、俺はどうすれば良いのか分からない」

「そっか」

 視線をナツヤから太陽へとフユミトは移した。

「フユミトは、フユミトはどうするんだ?」

「僕かぁ……」

 しばらく沈黙した後、フユミトは話し始める。

「このままだったら、ここからお金やお金になりそうな物を貰って国外に逃げるかな」

「やっぱり、そうか」

 ナツヤの相槌にフユミトはクスッと笑って話し続けた。

「もしも、僕がもしもナツヤの立場だったら。他の弱くて虐げられている人たちを助けるかな」

 言われてナツヤはハッとする。

「ナツヤにはその力がある。人を救う力が、国を変える力が」

 ナツヤは心が高揚すると同時に、使命感のようなものが芽生えた。

「俺が、俺が国を……」

「そうだよ、ナツヤは人の苦しみを知っている。きっと良い王様になるよ」

「王様だなんて……」

 フユミトはニコニコ笑って冗談じゃなく心から言っているみたいだ。

「王様は別に良いけど、弱い人を助けることは……。したいかもしれない」

 鉱山で自分が受けた仕打ち、絶望。そんな事を味合わずに生きる貴族、支配者たち。

 今度はナツヤの心は怒りで燃え上がった。

「よし、決めた! 俺は弱い人を助ける」

「そっか」

 その決意を優しい笑顔でフユミトは迎える。

「ナツヤがやるなら僕も着いていくよ」

「本当に?」

 フユミトは頭が回るし、不思議と人を引き付けまとめる。居てくれるならナツヤは心強かった。

「じゃあ、僕達の組織の名前を考えないとね」

「名前……か」

 ナツヤはうーんと悩み、登りかけている太陽を見て閃く。

「さっきフユミトが言った『黎明』って言葉を使いたい。カッコいいし」

 そこまで言った後ナツヤは続ける。

「それに、俺にとって今は人生の夜明けなんだ。後は、暗い夜のままの人たちの人生も夜明け……、黎明をあげたい」

「良いと思うよ」

 フユミトに言われて、ナツヤは少し照れた。

「それじゃ、黎明だけじゃ短いから僕からの提案。人に黎明を与えるなら『黎明の呼び手』なんてどうだろう?」

「『黎明の呼び手』か、良いな!! よし、俺達は黎明の呼び手だ!!」

 城壁に手を掛けて、ナツヤは大声で叫ぶ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み