災厄の壺 11
文字数 1,191文字
「じゃあな」
ウートゴが刀を振り下ろそうとしたその瞬間、ムツヤの胸元のペンダントが紫色に光った。
それと同時に刀は謎の力に弾かれて遠くへ飛んでいく。
距離を取って何が起きたんだとウートゴはムツヤを見る。
そこには女が立っていた。露出の多いドレスと褐色の肌。
(イラスト:しだれ彩先生)
「はじめまして、邪神サズァンよ」
「はは、そりゃどうも」
「あら、意外と混乱しないのね」
「そりゃ、こんなデタラメな裏の道具ばかり見てたらな」
サズァンは険しい表情を崩さずにウートゴを睨みつけていた。
「本当はこういう事しちゃいけないんだけどね」
「だったら大人しくお引取り願えませんかね、邪神様っ!!」
そう言ってサズァンに手裏剣を投げるも、圧倒的な魔力で軌道を捻じ曲げられてしまう。
「ムツヤ、早く薬を飲んで。私は長く持たないから」
薄れゆく意識の中でムツヤはハッとし、カバンから回復薬を取り出して飲む。
「っく、神ともあろうお方が、随分人間1人を贔屓にしたもんだな」
ウートゴに出来るのは悪態を付くことぐらいだ。目の前でムツヤを葬る千載一遇の好機を逃してしまった。
「ムツヤだから贔屓したってわけじゃないわ。ムツヤはこの世界の…… 最後の希望なのよ」
「亜人を滅ぼすだけで世界がどうなると?」
「黙れ下衆。そんなお前達のくだらない計画の話をしているわけではない」
サズァンは普段見せない神の威厳を出してウートゴを罵る。
「サズァン様……」
そんな中、ムツヤは傷が治り立ち上がっていた。
「ムツヤ、平気?」
「サズァン様…… ありがとうございまず」
ムツヤが礼を言うと、サズァンは振り返ること無く言う。
「お願いムツヤ。アイツを倒して」
ハッとし剣を強く握ると同時に、サズァンはスゥーッと透明になり、消えていった。
「邪魔が入ったな、それじゃ続きと行こうか」
ウートゴはまた分身体を作って、全員でムツヤめがけて走ってきた。
ムツヤは目を閉じて、ゆっくりと開く。
剣を引き抜いて、1体を頭から両断した。それは分身体であったが、断面からは業火が吹き出て消滅する。
「へぇ、今のは殺す剣だったな」
余裕ぶって言ったが、ウートゴの心には「まずいな」といった焦りが生まれた。
今までの戦いとは比べ物にならない速さと威力でムツヤは剣を振るう。
裏の住人の本気はここまでのものかとウートゴは思った。
投げる手裏剣はすべて弾かれ、斬撃は刀ごと分身体が叩き斬られていく。
「こうなりゃ俺も最後の手を使うしかないな」
ウートゴはムツヤに聞こえないよう小声で自分自身に言い聞かせた。自身の腕と脚に気力と魔力をありったけ込めて強化する。
1歩踏み込んで飛び出す。2歩3歩と走る度にその速さは上がっていった。捨て身の特攻だ。
金属がぶつかり合う激しい音と衝撃が辺りに響き渡る。
それが収まると、ムツヤとウートゴは距離を置いて背中合わせで立つ形になっていた。
ウートゴが刀を振り下ろそうとしたその瞬間、ムツヤの胸元のペンダントが紫色に光った。
それと同時に刀は謎の力に弾かれて遠くへ飛んでいく。
距離を取って何が起きたんだとウートゴはムツヤを見る。
そこには女が立っていた。露出の多いドレスと褐色の肌。
(イラスト:しだれ彩先生)
「はじめまして、邪神サズァンよ」
「はは、そりゃどうも」
「あら、意外と混乱しないのね」
「そりゃ、こんなデタラメな裏の道具ばかり見てたらな」
サズァンは険しい表情を崩さずにウートゴを睨みつけていた。
「本当はこういう事しちゃいけないんだけどね」
「だったら大人しくお引取り願えませんかね、邪神様っ!!」
そう言ってサズァンに手裏剣を投げるも、圧倒的な魔力で軌道を捻じ曲げられてしまう。
「ムツヤ、早く薬を飲んで。私は長く持たないから」
薄れゆく意識の中でムツヤはハッとし、カバンから回復薬を取り出して飲む。
「っく、神ともあろうお方が、随分人間1人を贔屓にしたもんだな」
ウートゴに出来るのは悪態を付くことぐらいだ。目の前でムツヤを葬る千載一遇の好機を逃してしまった。
「ムツヤだから贔屓したってわけじゃないわ。ムツヤはこの世界の…… 最後の希望なのよ」
「亜人を滅ぼすだけで世界がどうなると?」
「黙れ下衆。そんなお前達のくだらない計画の話をしているわけではない」
サズァンは普段見せない神の威厳を出してウートゴを罵る。
「サズァン様……」
そんな中、ムツヤは傷が治り立ち上がっていた。
「ムツヤ、平気?」
「サズァン様…… ありがとうございまず」
ムツヤが礼を言うと、サズァンは振り返ること無く言う。
「お願いムツヤ。アイツを倒して」
ハッとし剣を強く握ると同時に、サズァンはスゥーッと透明になり、消えていった。
「邪魔が入ったな、それじゃ続きと行こうか」
ウートゴはまた分身体を作って、全員でムツヤめがけて走ってきた。
ムツヤは目を閉じて、ゆっくりと開く。
剣を引き抜いて、1体を頭から両断した。それは分身体であったが、断面からは業火が吹き出て消滅する。
「へぇ、今のは殺す剣だったな」
余裕ぶって言ったが、ウートゴの心には「まずいな」といった焦りが生まれた。
今までの戦いとは比べ物にならない速さと威力でムツヤは剣を振るう。
裏の住人の本気はここまでのものかとウートゴは思った。
投げる手裏剣はすべて弾かれ、斬撃は刀ごと分身体が叩き斬られていく。
「こうなりゃ俺も最後の手を使うしかないな」
ウートゴはムツヤに聞こえないよう小声で自分自身に言い聞かせた。自身の腕と脚に気力と魔力をありったけ込めて強化する。
1歩踏み込んで飛び出す。2歩3歩と走る度にその速さは上がっていった。捨て身の特攻だ。
金属がぶつかり合う激しい音と衝撃が辺りに響き渡る。
それが収まると、ムツヤとウートゴは距離を置いて背中合わせで立つ形になっていた。