邪神の目覚め 1

文字数 1,009文字

「なに馬鹿なことを言って……」

 サズァンはそう言いかけて黙る。

「お前には神になる素質がある」

 エィノキは語りかけた。

「もし、神になり、全ての生き物を救済したいのであれば、この魔石を手に取れ」

 その言葉に、サズァンは戸惑う。脳裏に浮かぶのはソイロークとニシナーの顔。

 決心し、魔石に手を伸ばして、強く握る。

「よし、良いぞ」

 次の瞬間。体がふわりと宙に浮かぶ感覚があった。景色が暗転し、突然のことにサズァンは歯を食いしばる。

 そして、サズァンは草原に立っていた。目の前には大きな塔がそびえ立つ。

「こ、ここは!?」

「裏の世界だ。そして、この塔は。まぁ裏ダンジョンとでも言っておこうか」

「裏ダンジョン?」

 サズァンが聞き返すと「そうだ」と返事が返ってくる。

「ここには世界の理をひっくり返すような道具が古今東西から集まり、増殖する」

「どういう事かしら?」

「ここに足を踏み入れた者は、必ず道具を外に持ち出す。その道具たちが世界に流出すれば、人々は必ずその道具を使う」

 サズァンは察しが付いた。

「つまり、その道具たちで世界を滅ぼそうと?」

「御名答。力を手に入れた人間は、必ずその力を使う」

 エィノキの言葉にサズァンは言葉を返せずにいた。

「転移に力を使いすぎたか。そろそろ魔石の効力が切れる頃だ。後はそこにいるジジイ。タカクに聞いてくれ」

 いつの間にか、サズァンの隣には老人の男が立っている。驚き腰を抜かしそうだった。

「サズァン様。私はタカクと申します。今より貴方様にお仕えいたします」

 いきなりの事に戸惑うサズァン。タカクは続けて言った。

「今日よりサズァン様には、塔の最上階でお過ごし頂きます」

「塔の……、最上階?」

「左様でございます」

 どういう事かとサズァンは疑問に思う。

「この世界は、結界で隔離されております。千年は結界が持つでしょう」

 タカクはそこで区切り、また話す。

「塔の最上階では、サズァン様の魔力を高める事ができ、神にも等しい力を手に入れられる事が可能でございます」

「……、わかったわ」

 世界に絶望し、自暴自棄になっていたサズァンはその誘いに乗ってしまった。

「それでは、最上階までご案内致します」

 タカクが宙を飛び、サズァンも青い光を身に纏って空へ旅立つ。

 あっという間に最上階へと着いた。そこには立派な部屋が用意されている。

「本当にここに居るだけで良いのかしら?」

「左様でございます」

 タカクは深々と頭を下げて答えた。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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