父と娘 3

文字数 1,142文字

「はい、リピートアフターミー。わかる、大変だったね、辛かったね」

「わかる、大変だったね、辛かったね」

 ルーが言った後にムツヤとユモトは続けて言う。

「よし、それじゃモモちゃんが来たらオッケーね?」

「わかりました!!」

 そして、タイミングよく部屋のドアが開いた。そこに立っていたのはモモだ。

「あ、あの、ご心配お掛けしました……」

 申し訳無さそうに一礼してモモが部屋へと入る。気まずい沈黙が流れた。

「モモちゃん紅茶でも飲む?」

「あ、はい、頂きます」

「じゃ、じゃあ僕が淹れますね!!」

「ユモトちゃんしくよろー!」

 こんな時はおちゃらけたルーが救いになる。モモは椅子に座り、ふぅっとため息を吐いた。

「モモさん、どうぞ」

「すまないな、ユモト」

 目を細めてモモは紅茶に口をつける。

「私は、父は間違ったことをしていると思います」

「わかる」

 ムツヤが言うと部屋の空気が凍った。思わずアシノはムツヤの頭を引っ叩く。

「え、えーっと、モモちゃんのお父さんがいた事は本当にビックリしたわ!!」

 ルーが必死にごまかそうとしていた、ムツヤは何故自分が引っ叩かれたのか分からないでいる。

「私は…… 私は父を止めたい。亜人と人間が憎しみ合うなんて間違っています!!」

「分かります、モモさん」

 ユモトは教わったからではなく、本心からそう言った。

「そうだ、赤い玉を使ってお父さんとお話してみますか?」

 ムツヤの提案にモモはハッとする。

「ムツヤ殿!! お願いします!!」

 ムツヤから赤い玉を受け取ってモモは壁に投げつけた。しかし、その玉は落ちてコロコロと床を転がるだけだった。

「何か使うには他に条件があるのかも知れないな」

 アシノが言うとモモは残念そうに下を向いた。

「考えていても仕方がないわ、お夕飯を食べましょう!!」

 ルーの提案通り、みんな腹が減っていたし、疲れも溜まっていた。

 街に混乱が起きたというのに、ホテルのビュッフェは、いつもの様に用意されている。

 モモは料理に口をつけるが、何となく味がしない。しょっぱいかどうかしか分からなかった。

 夜になり、疲労困憊の皆はぐっすりと眠っていたが、モモは眠れずに居る。

「ハァイ、モモちゃーん?」

「ルー殿…… 寝なくて大丈夫なのですか?」

「私、夜行性だからねー」

 モモの横になるベッドに腰掛けると、モモも体を起こす。

「モモちゃん、こっちおいでー」

 ルーに言われるがままモモが近づくと、おもむろにモモの頭を胸に抱きしめた。

「る、ルー殿!?」

「私にはモモちゃんの気持ちを分かってあげられないけど、今はこうしていよ?」

 誰かに抱きしめられるなんていつ以来だろう。モモは人肌のぬくもりを感じていた。

 しばらくして、ルーがモモを離した。

「どう、眠れそう?」

「はい、ありがとうございます」
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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