地獄の旅は道づれに 7
文字数 1,553文字
鍔迫り合いになり、トレイは聞いた。
「亜人だからって理由で奴隷になるなんて間違っているとお前は思わないのか!?」
「うるせえな!!! 俺は俺が褒め称えられて地位も名誉も金も女も手に入りゃいいんだよ!!!」
「お前なんか勇者じゃねぇ!!!!!」
魔剣から吹き出した熱気とトレイの力に押し出されてオガネはよろめく。
「お前は俺の命を、尊厳を奪った!!! そして今、亜人達の尊厳まで奪おうとしている!!!!」
トレイは剣を振り回して叫ぶ。オガネは躱し受け止めるのに精一杯だ。
「お前には!! 地獄に落ちてもらう!!! 俺が地獄へ落としてやる!!!!」
「馬鹿なことを!!!」
オガネは魔法で太い氷柱を無数に飛ばし、トレイを牽制するが、届く前に熱気で溶かされてしまう。
「皆、魔人の娘をやれ!!!」
フラフラと起き上がり、サーラは襲いかかる兵に向かって構えた。
「サーラ!!!」
それを見て思わずトレイはサーラの元へ向かった。
「馬鹿、お前は勇者を……」
その隙きをオガネは見逃さなかった。トレイに向かって氷柱に電撃といった魔法をありったけ打ち込んだ。
熱気を出し続けたらサーラが焼け死んでしまう。トレイはいったん魔力を抑える。
「私は良い!! 勇者を!!!」
オガネの魔法が、兵士を巻き込んでサーラとトレイを襲う。周囲は阿鼻叫喚の地獄絵図になった。
土埃が舞い上がり、オガネは高く笑った。しかし……
「私のありったけ、使ってやるよ」
聖剣ロネーゼから溢れる光がサーラとトレイの二人を包む。
魔法を一つも受けること無く、二人は立っていたが、立っていると言うよりお互い支え合っていると言った方が正しい。
二人共限界が近い。
「死にぞこないが!!!」
オガネは剣を構えて特攻をしてきた。サーラとトレイは支え合って剣を構える。
「私も清く正しく生きたわけじゃない。死んで地獄があったらそこへ行くだろう」
トレイは黙ってサーラの話を聞いた。
「だから、アイツを地獄の旅の道づれにする」
聖剣を強く握ってありったけ魔力を込める。魔人にとってそれは。
死を意味していた。
聖剣から伸びた光がオガネを捉えた。腹を深々と突き刺し、自由を奪う。
「ぐがぁっ!!!」
痛みでオガネは声を出した。そこへトレイが走り、飛び、斬る。
オガネはトレイが描いた剣の動き通りに体から業火を吹き出す。
「あああああああ!!!!!」
そう断末魔を叫んで勇者オガネは絶命した。
トレイは次に兵士達を睨んだ。兵士長の撤退命令が下り、生きている兵は散り散りに村を出ていった。
それを見届けると、トレイは倒れる。
そして程なくして、サーラも地面にバタリと倒れた。
トレイは這いずってサーラの元まで進む。
自分たちは多分死ぬだろうと何となく分かっていた。
でも伝えることがある。せめて、それまで命の灯火が持ってくれと願う。
無限にも思える時間をかけてトレイはサーラの元へたどり着く。サーラは目を閉じたまま開かない。
「サーラ、起きてるか」
「死んでるよ」
「なんだ、まだ息があるじゃないか」
トレイが言うとサーラはゴフッゴフッと血を吐きながら目を開いて笑う。
肺に激痛を感じながらトレイも笑った。
二人は寝転がって夜空を見上げた。
「ありがとうな、俺、人として死ねるわ」
「そうかい、良かったな」
「俺は死ぬのか、魔剣に封印とやらになるのか」
「どっちかは私も分からない」
「もし剣になるなら、ちゃんとした奴に使ってほしいな」
「そうだね」
しばらく静寂が流れる。
「お前…… サーラは死んだら地獄に落ちるって言ってたな」
「あぁ」
サーラはもう長い言葉が話せない。短く返事をするのが精一杯だった。
「お前がどこへ行こうと」
「俺がその旅の道づれになってやるよ」
トレイの言葉を聞くと、サーラはニッと笑って、死んだ。
「亜人だからって理由で奴隷になるなんて間違っているとお前は思わないのか!?」
「うるせえな!!! 俺は俺が褒め称えられて地位も名誉も金も女も手に入りゃいいんだよ!!!」
「お前なんか勇者じゃねぇ!!!!!」
魔剣から吹き出した熱気とトレイの力に押し出されてオガネはよろめく。
「お前は俺の命を、尊厳を奪った!!! そして今、亜人達の尊厳まで奪おうとしている!!!!」
トレイは剣を振り回して叫ぶ。オガネは躱し受け止めるのに精一杯だ。
「お前には!! 地獄に落ちてもらう!!! 俺が地獄へ落としてやる!!!!」
「馬鹿なことを!!!」
オガネは魔法で太い氷柱を無数に飛ばし、トレイを牽制するが、届く前に熱気で溶かされてしまう。
「皆、魔人の娘をやれ!!!」
フラフラと起き上がり、サーラは襲いかかる兵に向かって構えた。
「サーラ!!!」
それを見て思わずトレイはサーラの元へ向かった。
「馬鹿、お前は勇者を……」
その隙きをオガネは見逃さなかった。トレイに向かって氷柱に電撃といった魔法をありったけ打ち込んだ。
熱気を出し続けたらサーラが焼け死んでしまう。トレイはいったん魔力を抑える。
「私は良い!! 勇者を!!!」
オガネの魔法が、兵士を巻き込んでサーラとトレイを襲う。周囲は阿鼻叫喚の地獄絵図になった。
土埃が舞い上がり、オガネは高く笑った。しかし……
「私のありったけ、使ってやるよ」
聖剣ロネーゼから溢れる光がサーラとトレイの二人を包む。
魔法を一つも受けること無く、二人は立っていたが、立っていると言うよりお互い支え合っていると言った方が正しい。
二人共限界が近い。
「死にぞこないが!!!」
オガネは剣を構えて特攻をしてきた。サーラとトレイは支え合って剣を構える。
「私も清く正しく生きたわけじゃない。死んで地獄があったらそこへ行くだろう」
トレイは黙ってサーラの話を聞いた。
「だから、アイツを地獄の旅の道づれにする」
聖剣を強く握ってありったけ魔力を込める。魔人にとってそれは。
死を意味していた。
聖剣から伸びた光がオガネを捉えた。腹を深々と突き刺し、自由を奪う。
「ぐがぁっ!!!」
痛みでオガネは声を出した。そこへトレイが走り、飛び、斬る。
オガネはトレイが描いた剣の動き通りに体から業火を吹き出す。
「あああああああ!!!!!」
そう断末魔を叫んで勇者オガネは絶命した。
トレイは次に兵士達を睨んだ。兵士長の撤退命令が下り、生きている兵は散り散りに村を出ていった。
それを見届けると、トレイは倒れる。
そして程なくして、サーラも地面にバタリと倒れた。
トレイは這いずってサーラの元まで進む。
自分たちは多分死ぬだろうと何となく分かっていた。
でも伝えることがある。せめて、それまで命の灯火が持ってくれと願う。
無限にも思える時間をかけてトレイはサーラの元へたどり着く。サーラは目を閉じたまま開かない。
「サーラ、起きてるか」
「死んでるよ」
「なんだ、まだ息があるじゃないか」
トレイが言うとサーラはゴフッゴフッと血を吐きながら目を開いて笑う。
肺に激痛を感じながらトレイも笑った。
二人は寝転がって夜空を見上げた。
「ありがとうな、俺、人として死ねるわ」
「そうかい、良かったな」
「俺は死ぬのか、魔剣に封印とやらになるのか」
「どっちかは私も分からない」
「もし剣になるなら、ちゃんとした奴に使ってほしいな」
「そうだね」
しばらく静寂が流れる。
「お前…… サーラは死んだら地獄に落ちるって言ってたな」
「あぁ」
サーラはもう長い言葉が話せない。短く返事をするのが精一杯だった。
「お前がどこへ行こうと」
「俺がその旅の道づれになってやるよ」
トレイの言葉を聞くと、サーラはニッと笑って、死んだ。