VS邪神サズァン 2

文字数 1,069文字

「生きる……、か」

 サズァンはアシノの言葉を繰り返す。

「生命は神が創った物ではないわ。小さな小さな屑が偶然に偶然を重ねて命が生まれた」

「その時から続く……。呪いのようなものよ?」

 それに対してモモが口を開く。

「サズァン様、そうだとしても、私は生きています。人間を恨んだこともありました。ですが、分かり合えると信じています!!!」

 次はユモトが珍しく大きな声で言った。

「僕は……、僕は病気になって、世界を恨んだこともあります!! だけど、やっぱり生きたい!!!」

「そう……」

 サズァンは短く呟く。

「私も親に恵まれなかったし、酷い親なんて沢山いるけれども、この世界でやっていくしかないと思っているわ」

 ルーは「それと」と言って疑問をぶつける。

「一つ、分からないことがあるわ。災厄の壺で亜人の命が危ない時。魔人ラメルがカバンを奪った時。助けてくれたのは何故?」

 ムツヤ達は確かにと思い出していた。

「そうね、まずムツヤを外の世界に行かせた理由を教えるわ」

 そう前置きをしてサズァンは続ける。

「ムツヤは……、あのままではムツヤは私を倒すことが出来なかったわ」

 どういう事だと全員が思う。

「ムツヤは人を斬ることが、殺すことが出来なかった。だから出来るようになってもらったわ」

 それを聞いてムツヤは心が一瞬ギュッと締め付けられた。

「そして、外の世界を守りたくなる動機。大切な仲間が必要だったの」

「どういう事ですかサズァン様!!」

 ムツヤが聞くとサズァンは答える。

「私は、この残酷で醜い世界を滅ぼしたい。でも、心の何処かで壊したくない気持ちもあるわ」

「そ、それだったら!!」

 ムツヤが言いかけるが、言葉を重ねられる。

「私は、もう何が正しくて何が間違っているのか分からないの」

 そこまで言った所で、サズァンは紫色のオーラを身にまとう。

「だから、私は今したい事をする」

 サズァンの目からは涙が一筋流れていた。

「ねぇ、ムツヤ。私が間違っていると思うなら……、お願い、私を止めて」

 サズァンの周りに光弾が浮かび上がり、一斉に打ち出される。

 ユモトが前に出て魔法の防御壁を張る。

 数発は防いだが、あっという間に壁は破られ、ユモトは吹き飛ばされた。

「ユモトさん!!」

「ユモト!!」

 皆でユモトの名を呼ぶ。ルーが駆け寄って回復薬を飲ませた。だが、ユモトは起きる気配が無い。

「ここでは裏の道具の効力が無効になるわ」

 サズァンは冷たく言う。もう正面からぶつかり合うしか無いだろう。

「お前ら、後はムツヤに任せるしかない!!!」

 そうだ、世界の命運はムツヤに託されたのである。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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