ミシロのお話 2

文字数 1,116文字

「な、なんだコイツ……」

 他の山賊たちはすっかり震え上がっていた。逃げようとするが、それはミシロが許さない。

 飛んで追いかけて殴る。上半身を拳が貫通した。

「ば、化け物だ!!」

「化け物だと、上等だ。こいつを試してやろう」

「おかしらぁ!!」

 山賊の(かしら)であろう大男が出てきた。手には青みがかった色の細い剣だ。

「魔人の残した武具だかしらんが、元上級冒険者の俺と、この剣に勝てるわけがねぇ」

 (かしら)はそんな事を言ってミシロに突っ込んできた。

 なるほど、先程の山賊より早い。だが、ミシロが躱せない程では無かった。

「まだまだこんなもんじゃねぇぜ!!」

 山賊が言った後、何と剣先で地面を突き刺す。それと同時に、地面から水弾が地中から無数に打ち出された。

 水は勢いをつければ、金属すら切断できる。数発食らうと、ミシロは久しぶりに痛みを感じた。

 それがきっかけで、ミシロは過去の虐げられていた日々がフラッシュバックしてしまう。

「いや、いや……」

「どうだ、この剣は!! 恐らく伝説通りなら、魔剣『ジャビガワ』だ」

「かっけーっす!! 頭!!」

 縮こまり震えているミシロ相手に山賊の頭はトドメを入れようとする。

「終わりだ、水よ吹き出せジャビガワァ!!!」

 地面を突き刺し、水を噴出させようとした。逃げねば、死ぬ……。

「嫌だああああ!!!」

 ミシロは発狂して飛び上がる。耳をつんざくほどの声に山賊たちは怯んだ。

「死ねえええええ!!!!」

 山賊の頭目掛けてミシロは急降下する。

「クソっ!!」

 そう言って頭は水弾を打ち続けるが、ミシロが無意識の内に貼っていたバリアに全て弾かれる。

 飛びながらミシロは右手の爪を鋭く伸ばし、頭の喉笛を切り裂いた。

「あっ、あー!!!」

 頭は右手でそこを抑えながら悶ていたが、助からないだろう。

 残りも殴り蹴り、切り裂いて8人居た山賊は、壊滅してしまった。

 まだ息がある山賊の元へ近付き、ミシロは上から見下す。

「お、お願いです!! 命だけは!!」

「何でお前達はこんな目に会ったか知ってる?」

「も、もう山賊なんてやりません!! 悪さもしません!! ですから……」

「弱いからだよ、弱いのがいけないの。弱いやつなんて奪われて当然なんだから」

 そう言ってミシロは腕を振ると、顔の無くなった山賊は息絶えた。

 すっかり静寂を取り戻した山の中で、ミシロは山賊たちの荷物を物色していた。

 食料は無かった。水は少しあったが、こんな奴らが口をつけたものを飲みたくない。

 そして、山賊頭の持っていた魔剣『ジャビガワ』と呼ばれていた剣を手に取る。

 ラメル様がカバンから取り出した道具。あの時は触れることすら出来なかった魔剣を握ることが出来て、少し嬉しさを感じる。 
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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