とりあえず、海へ行こう! 2

文字数 1,151文字

 ルーが散々駄々をこねたのでギルスはコーヒーを1杯入れてやる。

 喫茶店で働いたことは無いが、店に来る客に出していたので中々の腕前だ。

「最初からこうしとけば良かったのよ」

「礼も言えんのかお前は」

 コーヒーにミルクと砂糖をアホほど入れてルーは飲み始める。

「それで、あんたはこれからどうするの?」

「どうするも何も、俺は死んだことになってるし、裏の道具の研究が出来ればそれで良い」

「まぁ、それで良いって言うんなら良いんだけどねー」

 ふーんとルーは興味なさそうにコーヒーをすすっていた。

「それにキエーウの残党がまだ裏の道具を持っているかもしれないだろ? その監視もな」

「そうよねー、私もそれが気がかりなの」

 はぁっとルーはため息をつく。

「一応、戦闘に特化した道具は、この前の戦いで全部使ってきたと思うんだけど、まだ裏の道具は謎が多いからねー」

「とりあえず、お前達にはまた冒険がてら探知盤の石を埋めていってもらう」

 ギルスが言うと、ルーはふと気付いたことを口にする。

「そう言えば警邏(けいら)の姿が見えないけど」

「魔人の調査と、キエーウが消えたことによって亜人の過激派が活発にならないか監視だってよ」

「みんなどうして仲良くなれないのかしらねー」

「まったくだな」

 よっと椅子から立ち上がり、ルーは決めポーズをしてからギルスに言う。

「海に行ったらお土産ぐらい持ってくるわよ! イモガイとかスベスベマンジュウガニとか!!」

「毒じゃねーか!!!」

 それぞれが思い思いの日を過ごし、翌日冒険者ギルドに集まる。

 勇者アシノのパーティという事もあり、やたら注目されてしまい、ユモトは身を縮こませていたが、アシノは堂々としていた。

「それじゃ、行くか」

「はい!」

 ここから東に約100キロ、馬車で4日ぐらいの場所に海はある。道中は念の為に探知盤の石を埋めながらの旅だ。

 早速馬車を走らせて、街道沿いの街を目指す。ムツヤはすっかり気分が上がっていた。

 海までは道が出来ていて、街もあるので野宿はせずに済みそうだ。

 そして、道中何事もなく、4日目の朝、景色を眺めるムツヤが大声を上げる。

「あれって! あれって海なんじゃないですか!?」

 遠くに見える一面の青、ムツヤの言う通り海だ。

「うわー、僕も海って始めて見ました」 

「私も、初めて見ますね、あれ全部水なんですか」

 落ち着いて言っていたが、ユモトもモモも内心ではテンションが上がっていた。

「あらー、良かったわねー。お昼は皆で泳ぎましょうか?」

 ルーが提案するとユモトは少し暗い顔をする。

「あの、僕泳いだこと無くて……」

「私は川で泳いだことならありますが、あんなに大きな水で大丈夫なのかとちょっと怖いですね」

「大丈夫大丈夫、どうにかなるって!」

 ルーがそう励ますと、一行は海目掛けて馬車を走らせた。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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