魔人ナツヤ 3

文字数 963文字

 場は混戦状態になった。ムツヤが暴れまわるお陰で魔物の数は減っていくのだが、次から次へと生み出される。

 討ち漏らした敵は、ルーの精霊やヨーリィの活躍によりアシノ達の元まで来ない。

 イタヤパーティもムツヤの後ろを付いて行って前線を押し上げていた。

「頼む、もう抵抗は辞めてくれ!!」

 アシノの叫びも虚しく、ナツヤは次々に魔物を生み出す。

「もうアイツを殺るしか無いのか……」

 イタヤはそう呟く。確かに発生源を叩かなければ、無限にこのままだろう。そんな時、フユミトがナツヤに向かって話し始めた。

「ナツヤ、もっと力が欲しくないかい?」

「どういう事だ?」

 フユミトはこんな状況だが笑顔だ。

「杖と一つになるんだよ」

「杖と一つに……?」

 フユミトが何を言っているのか分からない。ナツヤは今更ながら尋ねる。

「なぁ、フユミト。お前は何者なんだ?」

「言ってなかったね。僕は、その杖の意志だよ」

 理解が追いつかなかった。杖の意志? どういう事だと。

「僕はとある場所に閉じ込められていたんだ。だけど、魔人ラメルによって解放された」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。話が分からない」

 ナツヤはフユミトを見て言う。

「解放された僕は、杖を使ってくれそうな人。ドス黒い感情を持ち、適性がある人を探していたんだ」

 フユミトの話をナツヤは必死に理解しようとする。

「空を飛んで、ナツヤを見つけた。その後は現場監督の記憶をいじって、新入りとして、あの場所に行った」

「どういう事なんだ!? フユミト!!」

 思わず声を荒らげるナツヤ。フユミトは至って冷静だった。

「僕はとある魔人の遺品なんだ。僕の使命は世界を壊すこと」

「そんな……」

 思わず膝から崩れ落ちそうになるが、なんとか堪える。

「ナツヤ、こんな世界壊しちゃった方が良いと思わないかい?」

 世界を壊す。ナツヤの頭には色々な思考が飛び交った。

「君を愛してくれなかった世界に不満は無いのかい?」

 確かに、ナツヤの人生は愛された物とは遠く無縁だ。

「僕と一つになろうナツヤ。僕は君の望みを叶えられる」

 ナツヤは悩んだ。この世界を壊す。考えたこともなかった。

 だが、考えている間にも、勇者たちは城へ確実に近付いてきている。

「……、分かった」

 下を向いたまま、そうポツリと言うナツヤ。フユミトはナツヤの手を取った。

「ありがとう、ナツヤ」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み