その心は 8

文字数 1,029文字

 五十一階層からは敵の攻撃が更に激しくなった。

 ムツヤがどんどん片付けてくれているので、まだ良いのだが、並の冒険者。いや、勇者でも厳しい戦いだ。

 仲間達は身を寄せ合い、ムツヤの戦いを見る事しか出来ない。

 五十五階層の険しい荒れ地を抜け、一息つく。

「あと、五階か」

 アシノがポツリと呟いた。

「やっとサズァン様に会えるってわけねー」

 ルーもそう言葉を出す。ムツヤは心ここにあらずと言った感じで座ったまま下を向いていた。

「なぁ、ムツヤ」

 アシノは神妙な顔をして話しかける。ワンテンポ遅れてムツヤはハッと顔を向けた。

「サズァンと戦いになったとしてだ。お前は奴を倒せる……、いや、殺せるのか?」

 あえて強い言葉でアシノは言い直す。ムツヤはまた顔を下に向けてしまった。

「俺は……」

「サズァンはきっとお前にしか倒せない。覚悟を決めてくれ」

 仲間達も黙ってそのやり取りを見つめる。

「サズァン様が……、何を考えているのか分かりません。分かりまぜんが……」

 ムツヤはギュッと目を瞑り、歯を食いしばっていた。

「皆さんを、世界の人を守るためだったら、俺は戦います!!」

「ムツヤ殿……」

「そうか……」

 モモは心配そうにムツヤを見つめ、アシノがそう言い上を向く。ルーは笑顔で語りかけた。

「まぁ、まだサズァン様を倒さなくちゃいけないって決まったわけじゃないし、話し合いで解決できるかもしれないわよ!! とにかく会ってみないと!」

「そうでずね……」

 ムツヤはいまいち元気の無いままだったが、次の階層へと階段を登り始める。

 そして、ムツヤ達は五十八階層を制圧し、あと一歩という所までやって来た。

「次の階には絶対に触手だらけのトカゲが出てきまず」

「そうか、分かった」

 ムツヤの言葉にアシノは短く返事をする。

 扉を開けると、仲間達は異臭を感じた。

「うわっ、クッサ!!」

 ルーは思わずそう口にした。

「アレがサズァンを守る最後の砦って所か」

 アシノも思わず顔をしかめて、部屋の中央に居る触手トカゲ、テンタクルドラゴンを見る。

 こちらに気付いたテンタクルドラゴンは毒液を飛ばしてきた。ムツヤは仲間のために防御壁を張り、カバンから弓矢を取り出して射る。

 命中した瞬間、テンタクルドラゴンの体が光り、グロテスクな穴を作った。

 一方的に矢を射るムツヤ。光の矢を浴び続けるドラゴンは、やがて空を向き大きく咆哮して呆気なく絶命した。

 ムツヤは空間の毒を除く玉を投げ、この階層も制圧する。

「よし、よくやったムツヤ」
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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