囚われの田舎者 6

文字数 949文字

 城の北にはどこからやって来たのか子供達が集まっていた。それを城の私兵が見つける。

「なんだ……、あれは?」

「紙芝居はじまるよー」

 アシノが紙芝居を持って子供達の前に居た。

「おい貴様、こんな所で何をしている」

「何って……、紙芝居だ」

 不思議そうな顔でアシノが答える。

「それは見れば分かる! だが、何故ここで……」

「だめか?」

「いや、別にダメとかじゃないけど……」

 そう言われてアシノは気を取り直して紙芝居を始める事にした。

「それじゃあ始めるぞ―。良い子のみんなwith悪い子まさし君!!!」

「ハーイ!!!」

 掛け声をかけると子供達の無邪気な返事が返ってくる。

「おいィ! まさし君可哀想だろ!!」

 私兵がツッコミを入れるが、アシノはスルーして紙芝居のタイトルを読み上げた。

「今日の紙芝居は『みっちゃんと物知りおばあちゃんと熟年離婚』だ」

「待て待て待て! 内容重すぎだろーがぁ!!」

 そう言われてアシノは別の紙芝居を取り出す。

「それじゃ、『三人の勇者と熟年離婚』だ」

「おいィ! どうやって話に熟年離婚絡めんだよ!!」

 うーんと唸って、アシノはそうだと別の紙芝居を取り出す。

「じゃあ『百人の小人と熟年離婚』は?」

「だからなんでそこまで熟年離婚にこだわるんだよ!! 定年を迎えた夫の妻か!?」

「社会問題だからこそ取り上げてるんだ」

「そうやってメディアが煽るから状況が悪化するんだよ!」

 怒る私兵に、アシノはため息を付いて言う。

「まったく、いい歳越えた大人が子供の見るものにグチグチ口出すなよ」

「だからこれ子供に見せる内容じゃねーだろ!!」

 次の瞬間私兵の顔に石が投げつけられた。

「って痛っ!! 誰だ今石投げたの!!」

「まさし君だ」

「チクショー! まさし君本当に悪い子じゃね―か! 庇ってやって損した!!」

「いいから、ほれ。水飴やるから帰れ」

 アシノは私兵に水飴を渡そうとするが、それを受け取らずに言う。

「とにかく、こんな所でそんな紙芝居など認めん」

「ほら、遠慮せず食っておけよっと」

 アシノは水飴を無理やり私兵の口に押し込んだ。

「うぐっ!! こっ、これは…… 甘いっ!!」

 そして、次の瞬間には私兵は眠りについてしまった。

 それを見届けた後、子供達に普通の水飴を配って、隠れて見ていたモモと一緒に城を目指す。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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