邪神の目覚め 2

文字数 932文字

 サズァンが塔の最上階で過ごし、一週間が過ぎた。

 気付いたことが、いくつかある。まず、この塔に居る間は食事や排泄といった生理現象が起きなくなった。

 睡眠は気まぐれで取っているが、取らなくても大丈夫そうだ。

 黒魔術師として迫害された苦しい過去から、ソイローク達と旅をした楽しい記憶。色々な事を思い出して過ごしていた。

 魔力は日々少しずつだが、強化されている気がする。




 二週間が過ぎて、初めて転移魔法陣を使い、地上一階へと降りた。

 魔物と戦ってみる。サズァンは相当な使い手だったので、難なく突破することが出来た。

 落ちている武器や薬といった道具を拾い集めてみる。



 一ヶ月後、サズァンは十階層まで辿(たど)り着く。

 色々な道具の効果も分かってきた。確かにこんな物たちが世界に流失したら、世界を何度でも滅ぼせるだろう。



 半年後、サズァンは書斎に籠もっていた。

 そこは書斎というよりは巨大な図書館である。

 興味深い本を見つけた。宇宙の成り立ちと、自分の住む世界の誕生が書いてある。

 半信半疑で読んでいたが、その内容によるとこうだ。

 人は神が(つく)ったのではなく、ゴミのような物が集まり、最初の生命体が出来た。

 その生命体が、段々と形を変えて、様々な動物になり、人も産まれる。

 それが本当であれば、人とは何なのだろうか。

 人だけではない。動物は生きるために別の生き物の命を奪う。

 奪われれば痛み苦しみ、死ぬ。そんな悲しい連鎖をずっと繰り返す。

 何故そこまでして生きなければいけないのだろうと。

 その答えをサズァンはずっと考えていた。



 一年後、サズァンは戦いも魔力も大幅に成長した。

 塔も二十階層まで攻略が出来る。

 塔の封印とやらが解けるまで、孤独と絶望で気が狂わないように戦い続け、書斎で本を読む生活だ。



 十年後、サズァンは狂ったほうが幸せである事に気付く。

 この残酷な世界では、まともで居るほうがおかしいのだ。

 そんな中、書斎で禁術が書かれた本を見つける。

 準備に三百年と膨大な魔力を使うが、全生物を殺すことが出来るという。

 サズァンはその本をページが擦り切れそうになるほど読みふけっていた。



 百年が経ち、サズァンは塔を完全に攻略していた。

 このまま行けば、もはやこの世界に敵は居ない。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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