身分証明 4
文字数 1,705文字
「ムツヤ殿、明日は早いですし夕食を早めに食べて寝ることにしませんか?」
「わかりましたモモさん」
とりあえずモモは問題を先送りにした。夕食も食べ終え、宿屋の小さな風呂で汗を流した。夕日が完全に沈んだ頃に二人は部屋に戻る。
「とりあえず、私は床で寝ますのでムツヤ殿はそちらのベッドをお使い下さい」
モモは床で寝ることを決めていたが、ムツヤはそれを聞いて驚く。
「いやいや、それだっだら俺が床で寝ますよ。モモさんに悪いですし……」
モモはムツヤの思いやりは素直に嬉しかったが、今の自分はあくまで従者だと思い直す。
「今の私はムツヤ殿の従者ですよ? 主を床で寝かせるなんて事はできません」
そんなやり取りが何回か続いた時にムツヤが遂に別の案を出した。
「それじゃあこのベッド大きいですじ二人で使いませんか?」
それを聞いてモモは顔が赤くなる。ムツヤはきっとただ単純に休みを取りたいだけだと分かってはいるのだが……
「……わかりました、では背中合わせで寝ましょう」
それを聞いてムツヤは笑顔を作る、二人はベッドに入り部屋の明かりを消した。
ムツヤは背中から感じるぬくもりが心地よかった。気のせいか石鹸の香りに混じって甘い匂いがモモからしている。
モモはと言うと心臓がバクバクして必死に素数を数えて落ち着こうとしていた。
親や妹以外と同じベッドで寝るなんて初めての経験で、しかも相手はムツヤだ。
「あの、ムツヤ殿は本当にあの男の言うことを信じるのですか?」
気付いたらふとそんな質問をしていた。モモはゴラテの言っていた冒険者の推薦状の事を調べておいたが、確かにそれは事実だったが。
しかし、あの男が信用に足るとは思えない。
ムツヤからの返事はなく、まさかと思いそっと顔を覗き込むとムツヤはもう寝てしまっていた。
少しだけ笑いがこみ上げてきて、その後はムツヤの寝顔をちょっとだけじっと眺めていた。
さて自分も寝るかと思った瞬間にそれは起きた、寝返りを打ったムツヤがモモの背中に触れるか触れないか辺りまで近づいてきたのだ。モモは頭が真っ白になる。
「おはようございます、モモさん」
特定の時間になると音が鳴る石でムツヤは目を覚ました。そしてモモを起こす。
「お、おはようございましゅ」
モモは寝たというのに何故かあまり元気そうではなかった。胸の高鳴りのせいで中々寝付けず寝不足になってしまったのだ。
「モモさん大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です!」
二人がホテルのフロントへ行くとグネばあさんが「寝不足かい? モモちゃん」と言い、またモモは顔を真っ赤にして否定をしていた。
約束の時間、二人は冒険者ギルドの前でゴラテを待つ。二人が到着して数分ほどでのっしのっしとあの大男が歩いて姿を見せる。
「よっしゃ、それじゃあユーカの実を探しに行くか」
「はい」
ムツヤは嬉しそうに返事をするとゴラテと一緒に歩き始めた。ゴラテの大きな歩幅に合わせるために二人は少し早歩きになる。
「あのー質問いいですか?」
「なんだ?」
「冒険者ってやっぱ依頼でモンスターを倒したり、冒険してお宝を探したりするものなんですか?」
ムツヤはずっと聞きたかったそれを質問した。隔離された田舎に住んでいる時からずっと大冒険に憧れていたからだ。
「まぁーその認識で間違いねぇよ。それより俺から今回の事について説明させてくれ」
そう言うとゴラテは懐から地図を取り出した。
「ここから6km離れた山奥で今年は見つかったらしい」
「疑問なのだが、本当に実在するのか? その幻のユーカの実ってやつは」
モモにはそのユーカの実が絵本や夢物語に出てくるような物に聞こえて仕方がない。
「実在はする、めったにお目にかかれないがな」
ゴラテの返事は曖昧なものだった。モモの疑心は強くなる。
「ユーカの実は幻だのどんな病気にでも効くだの言われているが、実際はそこまでの効果を持っていない。そして幻ってのも、ただ傷みやすくて市場に並ばないだけだ」
「ならば何故そんな物が必要なんだ?」
モモはまだこの男を完全に信頼していない。少しでも怪しい回答があったらムツヤを引っ張ってでも帰るつもりだ。
「急ぐぞ。途中の休憩で話してやる」
「わかりましたモモさん」
とりあえずモモは問題を先送りにした。夕食も食べ終え、宿屋の小さな風呂で汗を流した。夕日が完全に沈んだ頃に二人は部屋に戻る。
「とりあえず、私は床で寝ますのでムツヤ殿はそちらのベッドをお使い下さい」
モモは床で寝ることを決めていたが、ムツヤはそれを聞いて驚く。
「いやいや、それだっだら俺が床で寝ますよ。モモさんに悪いですし……」
モモはムツヤの思いやりは素直に嬉しかったが、今の自分はあくまで従者だと思い直す。
「今の私はムツヤ殿の従者ですよ? 主を床で寝かせるなんて事はできません」
そんなやり取りが何回か続いた時にムツヤが遂に別の案を出した。
「それじゃあこのベッド大きいですじ二人で使いませんか?」
それを聞いてモモは顔が赤くなる。ムツヤはきっとただ単純に休みを取りたいだけだと分かってはいるのだが……
「……わかりました、では背中合わせで寝ましょう」
それを聞いてムツヤは笑顔を作る、二人はベッドに入り部屋の明かりを消した。
ムツヤは背中から感じるぬくもりが心地よかった。気のせいか石鹸の香りに混じって甘い匂いがモモからしている。
モモはと言うと心臓がバクバクして必死に素数を数えて落ち着こうとしていた。
親や妹以外と同じベッドで寝るなんて初めての経験で、しかも相手はムツヤだ。
「あの、ムツヤ殿は本当にあの男の言うことを信じるのですか?」
気付いたらふとそんな質問をしていた。モモはゴラテの言っていた冒険者の推薦状の事を調べておいたが、確かにそれは事実だったが。
しかし、あの男が信用に足るとは思えない。
ムツヤからの返事はなく、まさかと思いそっと顔を覗き込むとムツヤはもう寝てしまっていた。
少しだけ笑いがこみ上げてきて、その後はムツヤの寝顔をちょっとだけじっと眺めていた。
さて自分も寝るかと思った瞬間にそれは起きた、寝返りを打ったムツヤがモモの背中に触れるか触れないか辺りまで近づいてきたのだ。モモは頭が真っ白になる。
「おはようございます、モモさん」
特定の時間になると音が鳴る石でムツヤは目を覚ました。そしてモモを起こす。
「お、おはようございましゅ」
モモは寝たというのに何故かあまり元気そうではなかった。胸の高鳴りのせいで中々寝付けず寝不足になってしまったのだ。
「モモさん大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です!」
二人がホテルのフロントへ行くとグネばあさんが「寝不足かい? モモちゃん」と言い、またモモは顔を真っ赤にして否定をしていた。
約束の時間、二人は冒険者ギルドの前でゴラテを待つ。二人が到着して数分ほどでのっしのっしとあの大男が歩いて姿を見せる。
「よっしゃ、それじゃあユーカの実を探しに行くか」
「はい」
ムツヤは嬉しそうに返事をするとゴラテと一緒に歩き始めた。ゴラテの大きな歩幅に合わせるために二人は少し早歩きになる。
「あのー質問いいですか?」
「なんだ?」
「冒険者ってやっぱ依頼でモンスターを倒したり、冒険してお宝を探したりするものなんですか?」
ムツヤはずっと聞きたかったそれを質問した。隔離された田舎に住んでいる時からずっと大冒険に憧れていたからだ。
「まぁーその認識で間違いねぇよ。それより俺から今回の事について説明させてくれ」
そう言うとゴラテは懐から地図を取り出した。
「ここから6km離れた山奥で今年は見つかったらしい」
「疑問なのだが、本当に実在するのか? その幻のユーカの実ってやつは」
モモにはそのユーカの実が絵本や夢物語に出てくるような物に聞こえて仕方がない。
「実在はする、めったにお目にかかれないがな」
ゴラテの返事は曖昧なものだった。モモの疑心は強くなる。
「ユーカの実は幻だのどんな病気にでも効くだの言われているが、実際はそこまでの効果を持っていない。そして幻ってのも、ただ傷みやすくて市場に並ばないだけだ」
「ならば何故そんな物が必要なんだ?」
モモはまだこの男を完全に信頼していない。少しでも怪しい回答があったらムツヤを引っ張ってでも帰るつもりだ。
「急ぐぞ。途中の休憩で話してやる」