青い鎧の冒険者 2

文字数 1,101文字

「ねぇ、頼みたいことがあるの、ちょっと」

 ルーはギルドを出るなり言いにくそうに言った。

「みんな疲れているところ悪いんだけど、孤児院の様子が気になって……」

 ルーは皆の顔を見る。疲れているのは分かっていた、自分自身も宿屋で思い切り寝たい気持ちもある。

「何だそんな事か、私は別に構わないぞ」

「俺も大丈夫ですよ」

「私も平気です」

「僕も心配ですので行きましょう」

「私はお兄ちゃんお姉ちゃんに付いていく」

 皆の優しい言葉に思わず涙が出そうになるが、ルーはこらえて笑顔を作った。

「みんな、本当にありがとう」

 しばらく歩くとムツヤ達一行は孤児院へ着く。

「ルー!!!」

 敷地内へ入るとルーの育ての親であるカゾノが走り寄ってきた。

「ルー、大丈夫? 怪我はない?」

「もー、私は立派な冒険者よ? トロールも魔人もけちょんけちょんなんだから!」

「本当に良かった……」

 カゾノはルーを抱きしめていた。きっと物凄く心配をしていたのだろう。

「ちょっと、先生恥ずかしいって、皆が見てる、見てるから!!」

 頬を赤らめてルーが言うと皆は笑いだしていた。

 騒ぎを聞きつけて子供たちも窓からムツヤ達を見始めた。

「あー、ルーお姉ちゃんと勇者様だ!!!」

「ユモトお姉ちゃん達もいるー!!」

「だから僕は男だって」と言うが子供たちは聞いちゃいない。ゾロゾロと外に出てムツヤ達を囲んだ。

「トロールと魔人が来たって言ってたけど本当だったの?」

「勇者様がやっつけてくれたんでしょ!?」

「すごく怖かったよぉ……」

 子供たちは一斉に話し出して収集がつかなくなってしまった。そこでふとルーは思い立ってカゾノに話をする。

「カゾノ先生、この間のお肉はまだ残ってる?」

「えぇ、まだたくさんあるわ」

 それを聞くとルーはニヤリと笑って宣言した。

「よーし、皆で戦勝祝いのバーベキューとしましょう。やらいでか!!」



 それから30分もしない内にバーベキューの準備が出来た。

 ルーの急な思い付きにムツヤ達も孤児院の人間も振り回されたが嫌な気分はしない。

「よーし、それじゃあ勝利を祝ってー…… かんぱーい!!!」

「かんぱーい!!」

 ルーが乾杯の音頭を取ると、皆で飲み物を高く掲げる。

 ワイワイと楽しく食事をし、腹がいい感じに膨れた頃。ムツヤは少し離れた場所で座っていた。

「ムツヤ殿、お隣いいですか?」

 モモは優しい笑顔を作って言う。

「えぇ、どうぞ」

「それじゃ失礼しますね」

 2人でパチパチと燃え上がる炎を見ていた。隣に座ったというのにしばらくモモは無言だ。

 しかし、気まずさは感じず、ただこうしている事に少し幸せを感じられた。

 そんな2人の良い雰囲気を完全にぶち壊す者がやってきた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み