ミシロのお話 1
文字数 1,077文字
(イラスト:L!l World先生)
ミシロは木の枝を集めることにした。うさぎを焼いて食べるためだ。
その辺を散策すると、十分な量の枝は集まったが、どうやって火を付けるかだ。
だが、ミシロは不思議と今の自分なら魔法で火を出せる感覚があった。
「うーん……」
集めた枝に目を閉じて炎を想像する。すると、手のひらからポンッと火の玉が現れ、枝に向かってふわふわと飛び出す。
「わっ!」
本当に出来たことにミシロはびっくりするが、同時に少し興奮していた。火が消えないように枝をいじり、息を吹きかける。
立派な焚き火ができると、そこでうさぎを串に刺して焼き始めた。しばらくすると、美味しそうな匂いが広がる。
「そろそろかな?」
うさぎを引き上げると、ミシロはパクリと一口食べる。
味付けこそ無かったが、肉のジューシーさは空きっ腹に染み渡るものだった。
夢中でうさぎを食べ終えると、ミシロは空を見上げる。これからどうしようと。
ふと、ラメル様の事を思い出した。世界をメチャクチャにすると約束したんだ。
しかし、世界をメチャクチャにすると言っても、何から始めれば良いのか分からなかった。
何だか疲労感が襲い、ミシロは眠ってしまう。
「んだよ、ガキが居るだけじゃねえか」
そんな声でミシロは目を覚ます。見ると男が3人。それ以外にも気配があった。
「アホな冒険者か、もしくは行商人かと思ったんですがねぇ」
立ち上がり、震えながらミシロは男達を見る。
「まぁいい、服を脱いで、金目のものを出せ」
男達は山賊だった。命令されたミシロが後ろに後ずさりした。
「ガキとは言え女ですぜ、良いようにしちまいましょうか」
「そうだな」
意地汚い笑みを浮かべてこちらにやって来る山賊。ミシロはどうしようどうしようと考え、そうだと思う。
翼を背中から出して空高く飛び上がった。
「なっ!?」
男達は驚きの声を上げる。そのまま逃げようとも考えたミシロだったが。
何故か心の底から「アイツ等を殺せ」という感情が湧き出る。自分に出来るのかといった不安があったが、衝動が抑えられない。
ミシロは急降下し、山賊の一人に蹴りを食らわせる。
「がぐっ」
そんな声を出して、山賊は吹き飛び、絶命した。
「な、何なんだこいつ!? 魔物か!?」
剣を抜いて山賊たちは構えた。武器を構えられ、ミシロはブルッと震え上がる。
「くっそ、この野郎!!」
斬りかかる山賊だったが、その瞬間、動きがスローモーションに見えた。
次にどんな動きをするのか、剣の軌道が全て読める。
軽々とミシロはそれを躱すと、右拳を顔に叩き込んだ。山賊の首が吹き飛ぶ。