その心は 2

文字数 1,173文字

 四十階層への階段の途中でアシノ達は緊張していた。

「次はどんな奴が来るんだ?」

「ボスは毎回変わるのでわがりまぜん!」

「そうか……」

 アシノはムツヤの言葉を聞いてワインボトルを強く握る。

 扉を開けると、太陽が照りつける草原が目に入った。ボスの居る部屋のはずなのに、ずいぶんとのどやかな光景だなと思うアシノ達。

「ここはっ!」

 ムツヤは、すぐさま剣を引き抜く。それを見て仲間達も武器を構えた。

「ムツヤ、この部屋では何が起こる!?」

「影です!!」

 影とは何の事だと思ったが、すぐに理解が出来た。太陽に照らされできる影が、スゥーッと伸びて自分から離れていく。

 そして、影は立体になり、自分達と同じ黒い影の人間が目の前に現れた。

「な、何よこれ!?」

 ルーの言葉と同時に影はこちらに向かってやって来た。

 ムツヤの影はムツヤに、モモの影はモモにと、形を写した者の元へと向かう。

 剣を構えたムツヤは影に向かって走り出す。ガキィィンと金属がぶつかり合う音が聞こえる。

 仲間達も武器を持ち、自分の影と対峙した。

 モモの影が元の主であるモモに襲いかかる。剣を無力化の盾で受け止めると、反撃と横薙ぎに剣を振るった。

 その剣が盾に当たると、モモは感触に驚く。相手の持っている盾も無力化の盾だった。

 ユモトの影は詠唱を始めて、氷柱と電撃をユモトに飛ばす。防御壁を展開してそれらを防いだ。

 先制を決めたヨーリィは自身の影に木の杭を当てた。すると枯れ葉のように体が崩れ落ち、また再生する。

 状況を横目で見たアシノがルーに言う。

「どうやら、こっちの武器や能力がそのまま使える様だな」

「えぇ、そのようね」

 ルーの影が精霊を召喚してこちらに向かわせていた。同じ様に精霊を召喚してルーは突撃させる。

 アシノの影はワインボトルのフタをスッポーンと飛ばした。

「この状況なら、一番ヤバいのはムツヤの影だな」

「えぇ、恐らくね」

 アシノとルーはそんな会話をする。

「とりあえず、私の影を倒しておいてくれないか? うっとおしい」

 当たると地味に痛いビンのフタを飛ばすアシノの影、ルーは精霊の一体を向かわせ、殴り潰した。

 自分の影があっさりとやられた事に複雑な心境のアシノだったが、戦いに集中する。

 モモは影と斬り合って、ユモトも魔法の飛ばし合いをしていた。

「モモ、ユモト、ヨーリィ!! 組んで一体ずつ倒せ!!」

 アシノの号令に返事をし、三人は一箇所にかたまる。

「ユモト!! まずは私の影を倒したい!! 防御壁で魔法を防ぎながら援護してくれ!」

「はい、わかりました!!」

 ユモトは言われるままにモモの影へと氷柱と電撃を放つ。躱しきれなかった魔法を無力化の盾で防ごうとし、一瞬の隙が出来た。

 それを逃さず、モモは影の首へと向かって剣を突き刺す。

 ガクリとし、動かなくなり、モモの影はそのまま消えてしまった。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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