囚われの田舎者 1

文字数 1,040文字

 ムツヤは気を失っていた。リミッターを外し、全力を出した為に、力を使い果たしてしまったのだ。

 目を覚まし、起き上がろうとするが、手足が動かない。その原因は疲れだけではなかった。

 両手両足が鎖でベッドに固定されていたのだ。今ある渾身の力を使ってもそれは千切れない。

「あ、やっと起きたのね、ダーリン」

 いきなり足元の方から声が聞こえた。女の声だ。

 首だけを起こしてそちらを向くと、ピンクと金のコントラストが見える。それはこっちに近づいてきた。

「おはよう、ダーリン!!」

 そう言って誰かが覗き込む、透き通るような白い肌に青空を写したような唇。そして、整った顔立ちだ。長い金髪がムツヤの顔に触れてむず痒さを覚える。


(イラスト:香炉先生)

「誰だお前!!」

 ムツヤは一瞬見惚れていたが、ハッと我に返って言うと、クスクスと相手は笑い始めた。

「お嫁さんだよー?」

 お嫁さんと言われてムツヤは考える。お嫁さんって言うとアレだ、仲良くなった男女が結婚ってのをして、なるやつだ。

「何言ってるんだ!?」

「まぁいいわ、私は『ラメル・キャ』ラメルって呼んで」

「あ、俺はムツヤ・バックカントリーです」

 自己紹介をされて思わずムツヤは呑気に返してしまった。その後また気付いて首を振る。

「違う、そうじゃなくて、なんで俺、縛られてるんだ!?」

「ダーリンが逃げないようにだよ? 既成事実を作るまで大人しくして貰おうと思って」

「きせい?」

「そう、既成事実!」

 ムツヤは言葉の意味が分かっていなかったようだが、ラメルは構わず話し続ける。

「知ってるかもしれないけど、私、魔人なの!!」

「なっ、魔人!?」

「そう、魔人」

 ムツヤは魔人という言葉に反応し、状況がまずい事は分かったが、いかんせん体が動かない。

「私の夢は世界をメチャクチャにすること!! 哀れな人間どもに徹底的に敗北を刻み込んでやるの!」

「そんな事は間違っている!!」

 ムツヤが言うと、不思議そうな顔をしてまた覗き込む。

「どうして?」

「どうしてって……、どうしてもだ!!」

「だから、どうして?」

 ムツヤは上手く言葉が出てこなかった。否定をしたいが、なんと言って良いか言葉が出ない。

「えーっと……」

「ほら、分かんないでしょ?」

「とにかくダメだ!!」

 次の瞬間、ムツヤは何が起きたか分からなかった。ラメルの顔が近づいてきた事だけは分かる。

 そして、唇に柔らかい感触。いい匂いと体を撫でるサラサラとした髪。

「うるさいお口は塞いじゃえ!」

 ムツヤは魔人ラメルにキスをされた。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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