囚われの田舎者 5

文字数 853文字

 その頃、東からやって来たイタヤとウリハも私兵に見つかっていた。

「おい、貴様たち何をうろついている!!」

「あーいえ、すみません。私は詩人でして、ここら辺を歩いていたら、何か良いポエムが思い浮かびそうで……」

 イタヤがヘラヘラと言うと当然私兵は疑いの目を向ける。

「胡散臭いな……、ならば何かポエムを読んでみろ」

 咳払いを一つしてイタヤは答えた。

「わかりました」



 ―僕の愛はあんころ餅―

 僕の愛は甘いあんころ餅
 きなこ餅とはちょっと違う
 ズッキーニとはだいぶ違う

 おはぎとはかなり似ているけれど
 僕の愛は甘いあんころ餅
 だけれど現実は厳しいのさ

 僕の愛が伝わる頃には
 それはしょっぱい塩辛になってしまうのさ
 そうさ君に甘い気持ちは伝わらない

 僕の愛は甘いあんころ餅
 君に伝えたこの心


 そして前科一犯



「前科一犯って何したんだよ!! ってか、お前、絶対詩人じゃないだろ!?」

 私兵がイタヤにツッコミを入れる後ろでウリハはまた、ため息をついている。

「次は、とっておきのポエムを読みましょう」

「話を聞けよ!!」



 ―愛はバタークリーム―

 愛はバタークリームと似ている
 おいしくても食べすぎると気持ち悪くなる
 愛も深すぎると胸焼けをしてしまう

 愛はバタークリームと似ている
 マーガリンの偽バタークリームはまずいのさ
 愛だって偽物だったらまずいんだ

 愛はバタークリームと似ている
 バターを使ったバタークリームはおいしいのさ
 愛だって本物なら相手に伝わるのさ

 愛はバタークリームと似ている
 僕の愛も君に伝わるかな


 そして前科二犯


「全然伝わってねーじゃねーか!! だから何をしたんだよお前は!! 前科増えてるだろうが!!」

「黙れ、お前は白滝でも食ってろ!!」

 ポエムを馬鹿にされたイタヤは懐から取り出した白滝を私兵の口に押し込んだ。

「うぐっ!! こ、これは…… ダシが聞いて……」

 そのまま私兵は眠りにつく。

「お前の心はさしずめ、がんもどきと言ったところだな」

 ハッハッハと笑うイタヤを放って置いてウリハは城へと向かっていった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み