決闘するなよ、俺以外のヤツと 8

文字数 1,358文字

「はーい、お待たせー」

 ルーはニコニコと笑ってタノベの元へと戻った。後ろではユモトが死んだ顔をしている。

「ユモトちゃんの了解は取ったから、あなたが勝ったら1日デートオッケーよ!」

 タノベは小さく手をぐっと握った。そしてアシノが言う。

「こっちが勝ったらとりあえず全財産置いてって貰おうか」

 山賊みたいな要求だったが、適当な理由で良かったのでとりあえず思いついたそれにしておいた。

「わかりました、それでは試合の時にまた会いましょう」

 そう言ってタノベは去っていく。ユモトは椅子に座って頭を抱えていた。

「どうしよう…… どうしよう……」

 ムツヤが負けることは確定している。つまり自分は男とデートをしなくてはならないのだ。

「ユモトさん…… すみません、俺のせいで……」

 ムツヤが申し訳無さそうな顔で頭を下げると、そちらを向いてユモトは首を振った。

「違います! ムツヤさんは悪くありません!」

「いーや、ハーレムハーレム騒いだコイツが悪いだろ」

 アシノに指摘されるとムツヤも落ち込んだ。試合の時間は近付いていく。

 あっという間に昼が過ぎ、決闘の時間の30分前になった。ムツヤとタノベは仲介人の前で正式な文書を持ちお互い何を賭けるか書いた紙を交換する。

 ムツヤは文字が書けなかったのでルーに代筆してもらった。

「俺は負けませんよ」

 タノベがそう言って右手を差し出す。その行為が一瞬分からずボケーッとしていたが、ハッとしてムツヤは手を握る。

 そして、お互い別々の待合室へと向かう。ムツヤは緊張してドキドキしていた。

 ファンファーレが鳴って闘技場の職員がドアを開ける。外の眩しい光が差し込んで一瞬目が眩むが、ムツヤはアリーナへ歩いて出た。

 先程までとは比べ物にならないぐらいの観客が居て「うわあああああ」と歓声が上がった。

 タノベは周りの客達に手を振る余裕がある。闘技場慣れしているのだろうか。

 ムツヤとタノベは審判の近くまで歩き、剣を抜く。

 審判が手を上に上げて、下げた。試合開始の合図だ。

 まずはお互い間合いを取ってにらみ合いが始まる。タノベは左手に魔力を込めて火の玉を数発、牽制に打った。

 ムツヤは左回りに走りそれを避ける。その先に火の玉と共にタノベが走り出して斬りかかった。振り下ろされる剣をムツヤも剣で受け止める。

 がら空きになったムツヤの腹を目掛けてタノベは蹴りを入れた。ムツヤは食らってよろめき、後ろに数歩下がる。

 そこにタノベは跳躍するように2歩大きく踏み出して横薙ぎに斬りつける。ふらめきながらもムツヤは剣で受け止め弾き返す。

「ムツヤさん大丈夫ですかね……」

 演技とはいえ劣勢のムツヤを見てユモトはハラハラしていた。

「大丈夫だ、少しもダメージ受けてないよアイツは」

 アシノはムツヤの戦いを見て言う。心配よりも初心者みたいな動きが上手くなっている事に感心した。

 ムツヤが反撃に走り、タノベに向かって袈裟斬りをする。それをタノベは下から切り上げて弾くとムツヤの手から剣が飛んでいき、地面へ落ちた。

「勝負あり!」

 審判がそう叫び試合を止めると、ファンファーレが鳴って勝者を讃える。タノベは剣を天高く掲げて会場からは拍手が鳴り響いた。

 タノベは剣を鞘に収めるとムツヤの元へ歩き、右手を差し出す。両者は握手をして試合が終わった。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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