偽物勇者 4

文字数 1,041文字

 裏の道具の反応はあの村からだった。ムツヤ達は急ぎ村へと向かった。

 一方その頃、村には珍妙な客が現れる。

「オラオラァ!! 魔人『チィター』様のお出ましだ!!」

 村の遥か彼方から一気に走ってやって来た男がそう名乗った。

「ま、魔人だと!?」

 村の衛兵がそう言って槍を構える。

「そうだ、俺様こそが新たなる魔人、チィター様だ!!」

 確かに目の前の男は人間離れした速さで走ってきた。自分達だけでは勝てないかもしれない。

 だが、今この村には彼がいる!!

「勇者様だ、勇者様を呼べー!!!」

「なっ、勇者だと!?」

 一人が宿に向かいジョンを呼びに行った。



「ジョン様、カッコ良かったです!!」

「流石、勇者様だよなー」

 女魔法使いと剣士に囲まれ、ジョンは気を良くしている。

「ふふ、それほどのものじゃありませんよ……」

 そんな中、衛兵の叫びが外から響く。

「勇者様!! 魔人が現れました!! お助け下さい!!」

 ジョンは持っていたコップを落とし、地面に転がった。そんな事もお構いなしに事態は動く。

「魔人だと!? ジョンの兄貴!!」

「ジョン様!!」

「あ、あぁ、分かっています」

 内心ガクガクしているジョンは仲間達と魔人の元へ連れ出された。

「貴様が勇者か、俺様は魔人チィターだ!!」

「魔人チィターですか? 聞いたことありませんね……。私は勇者ジョン!! 今降伏すれば許してやらない事もありませんよ?」

 ジョンに言われ、チィターは怒る。

「俺様は魔人だ!! それにジョンだかジョニーだか知らねえが、そんな勇者聞いたことねーぞ!!」

「私は勇者だ!!」

 ジョンはそう言い張った。

「まぁいい、戦ってみれば分かることだ。俺のスピードに付いてこれるかな!?」

 チィターは風のように走る。目で追えないぐらいの速さだ。それを見てジョンは焦る。コイツは本当に魔人なのではと。

「えぇい!! 食らえ!!」

 やけくそにパンチを数発出すと、チィターに当たりこそしなかったものの、地面は爆撃を受けたように(えぐ)れ、木々は真っ二つに倒れた。

 それを見てチィターは冷や汗を流す。コイツは本当に勇者なのではと。

 チィターは一気に距離を詰めて連撃をジョンに食らわせた。ボコボコにされたジョンは吹き飛ぶ。

「へっ、勇者ってのも大したことねーな!!」

「ジョン様!!」

 だが、吹き飛んだジョンは立ち上がり、パンチを繰り出した。

「それがスゲーのは分かったけどよ、当たらなきゃ意味がねーんだよ!!!」

 チィターの言う通りだった。ジョンのパンチは一発も当たっていない。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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