キエーウ強襲戦 4

文字数 1,025文字

 一方で仲間たちはどうしているかと言うと、遠くで起きた大爆発にそれぞれ武器を強く握りしめていた。

「ムツヤ殿……」

 モモは小さくその名前を漏らす。モモ達には大爆発の正体が敵のものか、ムツヤのものか分からなかった。

 ただ1つ分かることはムツヤが負けることは無いということだ。

「派手にやってるわね……」

 探知盤を見ながらルーは言う。怪しげな影も探知盤に浮かぶ点も無かった。ギルスからの連絡もない。

 誰もが油断をしてしまっていた。気付けなかった。ヨーリィさえも。

 森から音もなく人が飛び出した。それはモモ、ユモト、アシノ、そしてリースの居る後陣の横からだった。

 とっさに反応できたのはモモだけだった。その方角へ向けて剣を構える。

 次にアシノ、ビンのフタを弾き飛ばすがその人間には当たらなかった。

 ユモトは2人の行動を見て察知できた。とっさに防御壁を貼るが、既にその内側へ敵は入り込んでいた。

 そして敵は大鎌を構えて、何が起きた分からないリースを。

 腹から真っ二つにした。

 おびただしい血と共にリースの上半身が崩れ落ちて地面に落ちる。

「リイイイイイィィィース!!!!!!!」

 モモが叫んで近付く、そして回復薬を上半身に振りかけた。

 リースは叫ぶことも動くことも無かった。目を開いたまま、何が起こったか分からないまま、絶命していた。

「貴様あああああああ!!!!!」

 モモは声にならない叫びを上げてその人影の方を見る。

 ユモトはその凄惨さに思わず胃液がこみ上げて口に手を当てた。

「裏切り者には、まず死んでもらうじゃんな」

 男の声だった。ビュンビュンと大鎌を振り回し、血を払うと構え直した。

「俺が憎いか? 亜人。憎しみの連鎖を断ち切るなんて無理じゃんな。こうして簡単に憎しみなんて生まれちまう」

「人を殺しておいて何を言う!!」

 涙を堪えながら剣先で男を捉えてモモは怒る。

「それはお前も一緒じゃんよ。お前は俺の友人を殺した」

 それを言われてモモはハッとした。

「お前が斬った人間を忘れたか? 何でも切れる剣とデカくなる盾を持つ男じゃんよ」

「モモ、話を聞くな!! 戦いに集中しろ!!」

「キエーウの人間はほぼ皆、亜人に恨みがあるじゃんな。これは亜人をこの世から消すまで消えないわけ」

 モモは思い出してしまう。始めて命を奪った男のことを。

 出遅れた、男が鎌を持ち、こちらへ走ってくる。そこへ投げられたのは木の杭だった。

 騒ぎを察知して走ってきたヨーリィが男の前に立ちはだかる。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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