魔人VS邪神 1
文字数 1,134文字
(イラスト:月代先生)
ミシロはラメルに抱きかかえられて空を飛んでいた。初めは恐かったが、慣れると気持ちが良いものだったし、抱きしめられている心地よさも感じる。
「ラメル様、あの城で何をなさっていたんですか?」
「一人ね、仲間にしたい人が居たんだけど、出来なかったの」
ラメル様でも無理だなんて、どんな人なんだろうとミシロは思う。
適当な平原に降り立ち、ラメルは持っていたカバンを差し出す。
「これ、開けて欲しいんだ」
あまりに簡単な願いで、ミシロは逆に何を言われたのか分からなかった。
「このカバン、開けて」
ハッとしてカバンを手に取り開ける。
「出来たね、それじゃ何か取り出してみて」
何かと言われてもカバンの中には何もない。困惑しているとラメルが言う。
「何でもいいから、強い武器を想像してみて」
強い武器……、ひとまず剣を想像してみると、驚いた事に何か金属が手に当たった。
しかし、それと同時にミシロは立ちくらみを起こして倒れてしまう。
「も、もうしわけ……」
「やっぱあなた弱いから裏の道具触れないのね」
魔剣に触れたショックで体内の魔力のバランスが崩れたみたいだ。
そんな事を知らないミシロはこんな簡単なことも出来ない自分が情けなかった。
もう一度挑戦しようとした時だった。カバンから紫色の光が溢れだす。
その光は一つの幻影へ形を変えていった。
「初めまして、魔人さん?」
銀髪の長い髪と黒いドレス、褐色の肌。唇と爪は毒々しく紫色で塗られている。
「邪神サズァンよ」
ミシロは腰を抜かしてその場にへたり込んでしまった。ラメルはサズァンを見据える。
「初めまして、魔人ラメル・キャだよ」
スカートを引き上げラメルはペコリとお辞儀をした。
「そう、それじゃ」
お互い笑顔で挨拶を交わし。
「死ねっ!!!!!」
そう言って互いに光の玉を打ち出し始めた。
(イラスト:らすちむ先生)
ミシロは頭を抱えてしゃがみ、二人を交互に見る。
「ははははは!! 邪神様この程度なんですか?」
「壊れかけの結界があるから本気じゃないの、あなたこそこの程度?」
空を飛んで追いかけ合いながら光弾を打つ。この世の光景だとはとても信じられない。
「いい年なんだから無理しちゃダメだよ、おばさん?」
「お、おばっ!? ふざけるな小娘が!!」
互いの距離が近付くと、ドレス姿というフォーマルな格好に似合わない殴り合いが始まった。
殴り合いと言っても一発一発ぶつかり合うたびに重い音が辺りに響く。
ラメルは一気に急上昇して、空から赤い光弾を地面に振り落とした。
それをサズァンはドーム状に展開した光の壁で防ぐ。
「そろそろおしまいだよ!!」
ラメルが急降下してサズァンの光の壁に拳を下ろす。
すると、それは粉々に砕け散った。