因縁 3

文字数 1,324文字

 トッピングはトマトやトウモロコシ等見覚えのある野菜たちだったが、珍しい葉っぱが下に盛られているサラダが前菜として出てきた。

「それじゃあ、いただきまーす」

 ルーが言うと共にそれぞれ食事前の祈りを行った。

 口に入れて噛むと野菜たちの甘みが広がり、少し酸味のあるドレッシングとよく合った味だ。

 そして、珍しい葉っぱは薄いのにシャキシャキとした歯ごたえがあり、食べ心地が良い。

「んー、おいしー!! なんて葉っぱか知らないけど!」

「本当、おいしいですね」

 ユモトも食べて驚いていた。ルーは共に運ばれてきた赤ワインに手をのばす。

「うーん、ワインもやっぱり美味しい!」

 他の皆も真似してワイングラスを手に取る。深みとコクがあるのに飲みやすく、変な癖が無い。フルーティなワインだった。

「エルフって長命だから、ワイン造りを極めた人の年代物のワインがお手頃価格で飲めるのよ」

「なるほど、エルフのワインが有名なわけですね」

 モモは感心して言った。こればかりは他の種族には中々真似できないだろう。

 そんな中次々と料理が運ばれてくる。

「お待たせいたしました、本日のスープでございます」

 琥珀色に輝くスープには、さいの目状に切られた野菜と肉が入っている。

「スゲー!! どんなスープなんですか?」

「本日は山で取れた鹿やイノシシの骨を香味野菜と共に煮込み、それで作ったブイヨンを使用したスープでございます」

 一口飲むと旨味が口の中に広がる。飲めば飲むほどお腹が空くようなスープだった。

 ムツヤ達が前菜を堪能してしばらくするとメインディッシュ達が運ばれてくる。

「お待たせいたしました、鴨肉のソテーと森のキノコのパスタでございます」

 大皿にいい香りのする料理が運ばれてくる。ユモトはなれた手付きでパスタを皆に取り分けた。

「鴨肉おいしー! やっぱりこの味は野生じゃないと出せないわね!」

 噛むほどに味が滲み出る鴨肉と酸味と甘みのあるソースが口の中で幸せのハーモニーを奏でる。

「このキノコ、歯ごたえが独特で美味しいですね」

 ユモトは森のキノコのパスタが気に入ったらしい。キノコの香りがパスタにも移り、食べるとその香りが鼻から抜けていく。

 ムツヤ達はワインと料理を堪能していた。そして腹も膨れた頃にデザートが来る。

「こちら森の果実のシロップ漬けでございます」

 透明なシロップの中に色とりどりの果実が沈んでいるシンプルな料理だ。

 その中の木いちごを食べてアシノは目を丸くする。

「うまいな」

「アシノって酒飲みで悪ぶってるくせに甘いもの大好きだもんねー」

 無言でアシノはルーの頭を引っ叩いた。

 エルフ料理を堪能し終えた頃に店主がムツヤ達のテーブルへやってくる。

「本日の料理はいかがでしたでしょうか?」

「もうサイコーよ! 100点満点!」

 ルーは親指をグッと上げて言う。普段おとなしいユモトが珍しく店主に感想を言った。

「とても美味しかったです! どれも美味しかったですけど、特にキノコのパスタが、珍しいキノコでしたね」

「あのキノコはこの付近の森で取れる味の良いものなのですが、日持ちしないので一般には流通しないのです」

 へぇーっとユモトは感心する。

 ムツヤ達はそのまま会計を済ませて宿へと戻った。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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