災厄の壺 3

文字数 930文字

「ユモトさん!!」

 ムツヤは魔法の障壁で無数のナイフを受け止めるユモトに向かって叫んだ。

「ムツヤ殿、ご無事ですか!?」

 武器を構えた他の仲間達も後ろに待機している。

「ムツヤ、私達はどうすればいい!?」

 アシノが言うとムツヤは一瞬で考えた。普段はアホだが戦いに関しては経験の違いから頭の回転が早い。

「皆さんは隠れていて下さい。ユモトさんあと30秒だけ耐えて下さい!!」

「わ……かりました……」

 障壁を張るユモトは苦しそうだったが、その後ろでムツヤは呪文を唱えながら気を貯めている。

 相手もムツヤが何かをする気だと察し、攻撃の手を更に強めた。

「これならどうだ!!」

 ナイフ投げの男は腕をメチャクチャに振り回してユモトの障壁をぶち壊そうとしている。

「ユモトちゃん、修行の成果が出ているわね」

 そうだ、ユモトは修行中雨のように降り注ぐ矢を受け止め続けたのだ。

 あと15秒、もしユモトが倒れてしまった時に備えてルーが待機をしていた。

 障壁の色が少し薄くなり始めた、もう限界かと思われたが。

「はああああああああああ!!!!!」

 ユモトは持ち直した、そしてあと5秒。

 4、3、2、1、ムツヤが赤いオーラを纏いながら敵めがけて一直線に放たれた。 

 ムツヤはナイフよりも早く敵の障壁までたどり着き、拳を叩き込んだ。

 すると、そこを中心にヒビが入り、障壁は粉々に砕け散った。

「コイツ、マジか」

 言い終わる前にナイフ投げの男へ蹴りが炸裂し、男は吹き飛んで動かなくなった。

 障壁を張る少年は、それが砕けるとともに地面に倒れる。

 膨大な魔力を使ったからか、虫の息だった。

「ユモト、動けるか?」

「はい、何とか……」

 ムツヤは少年とナイフ投げの男から裏の道具を回収した。男は骨がそこら中折れていたがまだ命はある。

「ムツヤ!! 次の敵を頼む、私達も後から追いつく!!」

「はい、わがりまじだ!!」

「ムツヤ殿ご武運を……」

 モモの言葉に頷くとまた森の中へと走り出した。

「!! 私の残した精霊がやられたわ」

「ムツヤと一緒に敵を倒し続けるしかないわけか……」

 キエーウの残党は誰も動かなかった、ユモトが疲れている今、無理に拘束の魔法も必要ないだろう。

 アシノ達はまた馬車に乗りムツヤの後を追いかける。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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