王都の皆には内緒だよ! 3

文字数 1,124文字

「このパーティでキエーウを壊滅させたなんて…… 信じられません!!」

 立ち上がり、サツキは言う。それを見てアシノは唐突にこう返した。

「そこまで信じられないなら、お前ムツヤと軽く戦ってみろ」

「アシノ殿!?」

 モモは思わずそう言ってしまった。ムツヤ殿とはいえ相手は勇者だ、何かあってはまずい。

「お前が勝ったら…… そうだな、まぁお前の言い分を何でも聞いてやるよ」

 その言葉を聞いてサツキはアシノの方を振り返った。

 サツキの顔を見て思わずアシノはギョッとする。顔を赤くしてよだれを垂らしていたのだ。

「あ、アシノ先輩…… 私が勝ったら何でも言うこと聞いてくれるって今言いましたよね?」

「いや、お前の言い分を聞くとは言ったが……」

「言質取りましたよ!? 勇者に二言はありませんよね!? ムツヤさん、覚悟して下さい!!」

 ハァハァと興奮しながらサツキは双剣を構える。アシノは身の危険を感じてムツヤに言った。

「ムツヤ!! 本気でかかれ!! 私がヤバい!!」

「は、はい!!」

 軽く勝負をさせるつもりが、思ったより面倒な事態になってしまいアシノはため息を漏らす。

 両者は武器を構えて向かい合った。

「はーい、それじゃ見合って見合ってー? はっけよーいのこった!」

 ルーが言うと同時に2人は剣をぶつけ合った。キィィンと金属音が鳴り響く。

 サツキは右手左手と交互に剣で斬って突いてを繰り返すが、ムツヤにのらりくらりと躱されてしまう。

 そのスピードは段々と上がっていき、目で追えない速さになる。

「マジかよ、あんなの避けるなんて……」

「これは本当に青い鎧の冒険者かもしれませんねぇ……」

 信じていなかった訳ではないが、目の前の攻防を見てクサギもカミクガも信じざるを得なくなる。

「やりますね、でもこれならっ!!」

 サツキは刃に風を纏わせた。これで刃が触れなくても、体をかすっただけで切り傷ができる。

 流石にムツヤも後ろに大きく引いて、手から業火を打ち出した。

「なっ、詠唱無しであの大きさ!? マジパネェ!!」

 だが、サツキも勇者。剣を振り回して風を起こし、その業火を吹き飛ばした。

 ムツヤは風を受けながら、魔剣に炎を纏わせて突進する。

 サツキは双剣を交差させてそれを受けるが、あまりの衝撃に弾き飛ばされた。

 ここからはムツヤが一転攻勢になり、魔剣を振るい続けた。サツキは一振り一振りを剣で受け止めるが、その剣も熱を帯びてきた。

 熱と衝撃に耐えきれずバキンと音がして剣が折れる。

「ふふふ、少し加減をしていましたが。その必要は」

 サツキは剣を捨てて両手を天に掲げた。

「無いようですね!!」

 その両手は何かを掴んだかのように握りしめられていたが、モモ達は何が起きたのか分からなかった。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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