ルマでの戦い 8

文字数 1,246文字

 瞬間、ムツヤから青いオーラが溢れ始めた。

 魔力が体を巡り、身体の強化、及び、体のリミッターを次々に解除していく。

 そして、弾けたように剣を構えて突進する。先程とは比べ物にならない速さにギュウドーも目を見開く。

 剣と槍がぶつかる。すると、槍はギュウドーの手を離れて宙を舞った。

「なっ!!」

 ムツヤは時間を与えず、ギュウドーを滅多斬りにした。

「ぐが、ぐがああああああ!!!!」

「これが!!!」

 思い切り剣を振り上げて高く飛ぶ。

「最後の一撃だ!!!」

 ムツヤはギュウドーを真っ二つにした。傷から魔力が漏れ、紫色の光が溢れ出す。

 小さな爆発とともにギュウドーは煙となり、消えた。

 それと同時に、操る魔物たちも煙となり、もしくは統率を失って暴れだした。

「やったぜ!!!」

 イタヤが言うと同じ時だった。そう、それは突然に。

 空から人が降ってきた、いや、急降下してきたと言ったほうが近い。

 それはムツヤを抱えてサッと飛び去ってしまった。あまりに急な出来事なので皆、現実感を失っていた。

 最初に動いたのはモモだった。

「ムツヤ殿!!!!」

 そう叫んで、ムツヤが連れ去られた方向へ走る。だが、あまりに速さが違いすぎる。

「む、ムツヤっち!?」

 ルーは呆然としてその方向を見ることしか出来なかった。

 離陸時、連れ去られたのを見てイタヤは大きな声を出す。

「待てこらー!」

 剣を振るうと、これでもかって位の速さで光の刃が飛び、砂埃が舞う。

「邪魔だぁー!!!」

 ムツヤを追いかけるモモは怒りのあまり、立ちはだかる魔物を全部倒してしまった。

 主が居なくなった魔物たちはすっかり立場を弁えたのか、散り散りになって逃げていく。

 だが、それをイタヤが逃すはずもなく、圧倒的存在感の極太な光の刃を飛ばした。

「アシノ!? ムツヤっちが攫われたわ!」

「どういう事だ!?」

 連絡石からの急な報告にアシノは焦る。

「ムツヤっちがドエロスミス将軍を倒したの!! だけど、その後、攫われちゃったのよ!!!」

「待ってくれ、状況が飲み込めない。とりあえず魔人は倒したんだな?」

「倒した……。みたいだけど、ムツヤっちが!!」

「わかった、ひとまず作戦本部で合流しよう」



 イタヤチーム、ウリハチームは街へと戻った。

 魔人を倒した事に街はお祭り騒ぎだったが、その喧騒を抜けて作戦本部へと向かう。

「おぉ、勇者イタヤ様。この度のご活躍、誠に感謝いたしますぞ」

「あ、えぇ……」

 街の議長やら、治安維持部隊、軍の幹部、この街のギルドマスターと言ったお偉いさん方達が待っていた。

 次々にイタヤを、アシノを、そのパーティメンバーを讃えたが、皆、浮かない顔をしていた。

「あの、何かありましたか?」

 ギルドマスターがイタヤに問いかける。

「いえ、その、魔人を倒したのは俺ではなく、青い鎧の冒険者でした」

「ふむ、それはそうですが……」

 アシノが話を遮って話し始める。

「青い鎧の冒険者は、魔人を倒した後、飛び去っていってしまったようです。人間にそんな芸当が出来るとは思えません」
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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