偽物勇者 3

文字数 986文字

 夕日に照らされる村の外にアシノ達とジョンは居た。村人総出で見物人になっている。

「私の能力は周りを巻き込みます。戦うのならば、代わりに腕の立つ者と対峙して頂きます」

「ふっ、舐められたものですね……」

 口ではそう言っていたが、ジョンはあの鳥に追われた時を思い出して膝がガクガクしていた。

 あの時とは違うと自分に言い聞かせ、正気を保つ。向かいに居るアホっぽそうな男ならば、今回は勝てると。

「いつでもどうぞ」

 アシノに言われ、ジョンは拳を構え、一気に衝撃波を出した。

 拳の形をした青色の波動が飛び、ムツヤを捉える。

 しかし、それは最小限の動きでかわされてしまった。

「おぉ……!!!」

 見慣れない魔法に驚く村人達。ジョンの仲間である女剣士と魔法使いがエールを送る。

「ジョンの兄貴ー!! 負けるなー!!」

「ジョン様ー!! 頑張ってー!!」

 パンチを繰り出しながら突っ込んでくるジョン。ムツヤは足を引っ掛けて転ばせた。

「うぐうう!!」

 地面に倒れるジョンは屈辱を味わう。




 その後もムツヤに攻撃をかわされ、転ばされ、ジョンはボロボロになっていく。

「はぁはぁ、ちぐじょー!!」

 鼻血を出しながらジョンは言う。

「そろそろ降参された方が良いのでは?」

 敵とは言え流石に見ていられないアシノが言うが、ジョンは立ち上がった。

「俺は勇者だ!! 誰が何を言おうと勇者なんだ!!」

「アシノ!! ヤバいわよあの人!! 本当に死んじゃうわよ!!?」

 目を閉じてアシノは考える。面倒くせーと。

「あーもう、分かった。あなたは勇者です。お前等ー撤収だー」

「わがりまじだ!!」

 ムツヤはジョンに背を向けて歩き出した。皆もぞろぞろとアシノにの後を着いていく。

 村人と仲間からは歓声が上がった。

「やはりジョン様は勇者です!!」

「ジョンの兄貴!!」

「はぁはぁ、俺はやったぞー!!!」




 ムツヤ達は村から離れた人通りが殆どない森の中で家を取り出す。

「しかし、アシノ殿。あのジョンとかいう男、アレで良かったのですか?」

 モモの言葉にソファーで眠そうに目を閉じるアシノは返事をする。

「まぁ、良いんじゃないのか?」

 もしゃもしゃクッキーを食べながらルーも言う。

「勇者の偽物って、いつの時代もいるしねー」

 そんな中、ギルスから連絡が入り、目の前に姿が映し出された。

「みんな、動いている裏の道具の反応が近くにある。気を付けてくれ!!」
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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