災厄の壺 1

文字数 919文字

 最後の訓練が終わった翌日、ムツヤ達はエルフの村を出る。

 出発の前に全員でリースの墓参りを済まし、村のエルフ達にも礼を言った。

「皆さん、どうかご武運を」

「あぁ、世話になったなカノイ」

「また来るわよ!!」

 ルーはそう言って親指を立てる。

「お世話になりまじだ!」

「カノイさん、また!」

 ムツヤとユモトも別れの挨拶を済ましたのを見てアシノは言う。

「それじゃ出発するぞ」

 その言葉を聞いてモモは馬車を走らせる。後ろではたくさんのエルフと冒険者達が手を振ってくれていた。

 あのエルフ達を守るためにも災厄の壺を叩き壊さなければならない。

 ここから北西に約50キロメートル。そこに災厄の壺がある。

 馬車の中ではムツヤが探知スキルを使って裏の道具を持たない敵への警戒をしていた。

 意外にも敵は1人も現れずに1日が終わった。いつも通り野営の準備を進める。

「妙だな、まだ敵地から遠いからか……」

 アシノは何か胸のざわめきを覚える。キエーウは足止めよりも本拠地を守ることを優先しているのだろうか。

「アシノー、ごはんよーごはん!」

「わかった、今行く」

 そんなアシノを遠くから見つめる影があることを、誰も気づけていなかった。

 腹が減っては戦はできぬとは言ったものだが、逆に腹がいっぱいでも戦はできない。

 人間、食べた直後は動きが鈍るのだ。

「ごちそうさまでした」

 皆がユモトの手料理を堪能した後、ムツヤはハッと気がついた。

「誰かが、いや、たくさんこちらに向かってきていまず!!」

「やっぱりか」

 アシノの嫌な予感は当たってしまう。探知盤にも裏の道具の反応が四方から集まりだす。

「ムツヤ!! 北西から時計回りに敵の数を減らしていってくれ!!」

「わがりまじだ!!」

 そう言い残すと次の瞬間ムツヤは風のように消えた。

「私達は馬車に乗ってムツヤの後を追うぞ!!」

「はい!!」

 モモが返事をして馬車に乗り込む。このままここに残れば四方から攻撃を受けてしまう。

 移動しながら戦ったほうが安全だとアシノは判断する。

「ルー!! 弱いやつでいい、精霊をここに残していってくれ」

「任せて!」

 牽制と偵察用の精霊をルーは召喚した。そして馬車を走らせる。

 その頃、早くもムツヤは接敵していた。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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