オークの村の救世主になろう 3

文字数 1,425文字

 どうぞお掛け下さいと促され、椅子に座ろうとする。

 そんな時に集会場のドアを荒々しくバタンと開けて、一人のオークが飛び込んできた。

 例の如くムツヤを疑い続けるオークのバラだ。

「村長、その人間はきっと自作自演をしている! 今度は油断させて殺そうって考えだ!」

「よせバラ!!」

「なんて事を言うんだお前は! ムツヤ殿はそんな方ではない、貴様もムツヤ殿の強さは知っているだろう? 仮にムツヤ殿がオークを憎んでいるのであれば我々は今頃全滅している!」

 モモは怒りの目をしてバラを睨み、怒鳴りつける。

「黙れブス! 俺は信じない、人間なんかみんな死ねば良いんだ!」

 そう言ってバラは背負っている斧に手をかけようとしたが、モモは剣を抜いて飛びかかり喉元の前で止めた。

「いい加減にしろ、バラ…… タンおばさんの事は本当に残念だし気の毒だと思う。だが、憎むべき相手は選べ」

「っぐ、強えぇからって調子に乗んなよブスが!」

 そう捨て台詞を吐いてバラと呼ばれたオークは去っていく。

「どうかお許しくださいムツヤ様、あの者は襲撃によって母を失ったのです」

 さっき(まで)のムツヤのバラに対する印象ははっきり言って良いものではなかった。

 しかしその話を聞いて不快感は同情に変わる。

 自分だってじいちゃんを殺されたら多分…… 相手を一生許さないだろうし、仇討ちをしに行くだろう。

「いえ、気にしでいません。同じ立場だっだら俺もあんな感じになるでしょうし……」

 そこで気になっていた事をロースはムツヤに質問する。

「しかし、何故ムツヤ様はこの村の近くに居たのだろうか? 疑うわけではありませんが。それにあの薬は一体」

「あっ、そうですね。簡単に言うと俺…… じゃなくて私の家はものすごーぐ、それはもう本当に田舎でして、人間は俺じゃなくて私と」

「あのームツヤ様、話を遮って申し訳ないが無理に私と言わなくても結構なのだが……」

 背伸びをするムツヤを見かねてロースは断りを入れておいた。

「あーじゃあ俺とじいちゃんの二人しか居なぐでですね、周りは結界で囲まれてたのですよ」

「結界で……?」

 モモとロースは互いを見つめ合って不思議そうな顔をし、視線をムツヤに戻す。

「失礼ですがムツヤ様、住んでいた場所の名前は何というのでしょう、もしかしたら何か分かるかもしれませんので」

 村長のロースは至極当然な質問をする。

 だが、その質問にはムツヤも困ってしまう。

「うーん…… 今まで気にしたことも無かっだし、じいちゃんも『田舎』としか言わなかったから…… そう言えばわからないです。聞いておけば良かった……」

 確かに閉じた空間に住んでいるのであれば、そこが世界の全てだから地名なんて物は無いのだろうとモモは察した。

「そうですか。いえ、お話を遮ってすみません」

 ロース村長はそう言って少し考える。

 確かに変に知らない地名が出るよりもその答えの方がしっくりと来る。

「そんなある日、俺はこの本を拾いましで。外の世界には冒険者ってのが居で、女の子とハーレムっでの作るんだと思ったらドキドキして眠れなくなっで」

「えっ」

 ムツヤが急にとんでもない大火炎魔法の爆発級発言をしてモモは固まる。

 村長も思考がピタリと止まってしまった。

 手に持っている本の表紙には際どい格好をした女のイラストが描かれている。

「俺もハーレムを作りたいと思っで、それでじいちゃんにお願いしで外の世界へ出してもらっで、気が付いたらあの森に居たってわけなのですよ」
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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