下剋上 9

文字数 954文字

 ナツヤは自分でも叫んでしまった事に驚いた。魔物が子供達に一斉に飛びかかる。

 一際大きな悲鳴の後に何も聞こえなくなった。

「これで、憎い貴族様は皆死んだね」

 淡々と言うフユミト、ナツヤは目の前の光景から視線を逸らしたくて彼の顔を見る。

 目が合うとニッコリと笑い返してくれた。

「従者たちはいかがなさいましょう?」

 デュラハンが聞くとナツヤは悩んだ。そこまでは考えていなかった。

「お腹すかない、ナツヤ? 食事でも作ってもらおう」

「そ、そうだな」

「かしこまりました。おい、従者共!! 死にたくなければ食事を用意しろ!!」

「か、かしこまりました!!!」

 弾けたように従者共は城の中へ入る。

「ナツヤ様、死体の処理は我々にお任せ下さい。ナツヤ様はお疲れでしょう。お休み下さい」

「だってさ、ナツヤ。ご飯できるまで城の中でも見学しようよ」

「え、あぁ、そうしよう」

 ナツヤはどこか心あらずだった。ナツヤとフユミト、鉱夫達はぞろぞろと城の中へと入る。

 見たこともない綺麗な装飾品や貴金属がそこらかしこに置いてある。

 食堂らしき場所にたどり着くと、ナツヤ達はそこで食事が来るのを待つ。

「おーい、早くしてくれ。パンでも何でもいいから持ってきてくれよー」

 一人の鉱夫がそこに居たメイドに言う。

「か、かしこまりました!!」

 メイドは急ぎ足で厨房に向かっていく。その後ろ姿を鉱夫達はギラギラした目で追っていた。

「ひひっ、女だ。久しぶりに見た女だ」

「中々上玉だよな、流石貴族様だ」

「あのでかい胸、たまんねぇな」

 上品な空間に似つかわしくない下品な会話を始める。

 しばらくして、たっぷりのパンと野菜のスープが届けられた。

「俺達、肉も食いてーなー」

「かしこまりました!! 調理中ですのですぐお持ちします!!」

「なぁ、コレ毒とか入ってないよな……」

 鉱夫が心配して言うが、フユミトはお構いなしにスープをすすった。

「多分大丈夫だよ、毒なんて城に無いだろうし。おいしいよ」

 そう聞いて生唾を飲んだ後に鉱夫達はスープに手を付けだした。ナツヤも一口飲む。

 野菜の優しい甘みと、コクが口に広がり、パンもふわっふわで美味しい。

「かーうめぇ!!!」

 夢中で食べる鉱夫達、ナツヤも何口か食べた後に言う。

「美味しい。ほんと、美味しい」

 気付けば何故か涙が溢れていた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み