千年前の物語 1
文字数 1,057文字
これは今から千年前のサズァンの記憶。
「よしっと、これで全部か」
魔物へ突き刺した剣を引き抜いて男が言う。
その男は短めの茶髪で、フルプレートアーマーを身に纏 っていた。
「えぇ、終わりましたねソイローク」
そう声を掛けたのは、長い金髪で白を基調とした魔法使い服を着ている女だ。
デザインはそのままユモトが着ている服に似ていた。という事は、女はゴイチの一族の魔法使いだろう。
ソイロークと呼ばれた男は、後ろに立つ魔法使い達に声を掛ける。
「ニシナー、サズァン。今回も助かった」
「はい!」
ニシナーと呼ばれた女は笑顔を返す。その隣には褐色の肌と銀髪。サズァンが立っていた。
だが、見慣れたサズァンの格好とは違う。ニシナーとは対照的に、黒く長いドレスで、紫色のメイクをしていない。
「ソイローク様、ニシナー様、お疲れ様でした」
二人を様付けで呼んでいる所から、サズァンより上の立場なのだろう。
それもそのはずだった。ソイロークは勇者であり、ニシナーはゴイチで一番の魔法使いだ。
三人は魔人討伐のために旅をしていた。
「それでは、私はこの辺りで」
「いつもすまないな」
サズァンの言葉にソイロークはそう返す。
この時代は黒魔術師は魔人になる一歩手前だという偏見があり、黒魔術を使う一族の末裔であるサズァンは、戦いの時以外二人と距離を取って旅をしていた。
「いつかきっと、皆も分かってくれる日が来ます」
ニシナーはサズァンを勇気づける。
「俺が魔人エィノキを倒したら、皆も俺の話を聞いてくれるだろう」
二人とサズァンは魔人を追いかけ、その途中、とある街に滞在していた。
近くで魔人の目撃情報があるのと、魔物が活性化していたので数日魔物狩りをして過ごしている。
魔人と魔物のせいで国自体が疲弊し、貧しかった。この街も例外ではない。
「そこのお姉ちゃん!! 助けて!!」
サズァンがスラム街と化した街はずれで安宿を取ろうとしていたら、小さな女の子に声を掛けられた。
「どうしたの?」
「友達が死んじゃいそうなの!! 助けて!!」
「っ、わかったわ!」
ただ事ではない様子にサズァンは女の子の後を追い、スラムの奥へと入っていった。
やがて、細い路地に着くと、女の子はそこで待ち構えていた青年達の後ろへ隠れる。
「これは、どういう事かしら?」
「姉ちゃん、いい服着てるな。金を置いてってくれよ」
女の子は嘘をついていたらしい。最初からこうする事が目的だったのだ。
「痛いのは嫌だろ? 死にたくないだろ?」
青年達はナイフをチラつかせてサズァンの元へやってくる。
「よしっと、これで全部か」
魔物へ突き刺した剣を引き抜いて男が言う。
その男は短めの茶髪で、フルプレートアーマーを身に
「えぇ、終わりましたねソイローク」
そう声を掛けたのは、長い金髪で白を基調とした魔法使い服を着ている女だ。
デザインはそのままユモトが着ている服に似ていた。という事は、女はゴイチの一族の魔法使いだろう。
ソイロークと呼ばれた男は、後ろに立つ魔法使い達に声を掛ける。
「ニシナー、サズァン。今回も助かった」
「はい!」
ニシナーと呼ばれた女は笑顔を返す。その隣には褐色の肌と銀髪。サズァンが立っていた。
だが、見慣れたサズァンの格好とは違う。ニシナーとは対照的に、黒く長いドレスで、紫色のメイクをしていない。
「ソイローク様、ニシナー様、お疲れ様でした」
二人を様付けで呼んでいる所から、サズァンより上の立場なのだろう。
それもそのはずだった。ソイロークは勇者であり、ニシナーはゴイチで一番の魔法使いだ。
三人は魔人討伐のために旅をしていた。
「それでは、私はこの辺りで」
「いつもすまないな」
サズァンの言葉にソイロークはそう返す。
この時代は黒魔術師は魔人になる一歩手前だという偏見があり、黒魔術を使う一族の末裔であるサズァンは、戦いの時以外二人と距離を取って旅をしていた。
「いつかきっと、皆も分かってくれる日が来ます」
ニシナーはサズァンを勇気づける。
「俺が魔人エィノキを倒したら、皆も俺の話を聞いてくれるだろう」
二人とサズァンは魔人を追いかけ、その途中、とある街に滞在していた。
近くで魔人の目撃情報があるのと、魔物が活性化していたので数日魔物狩りをして過ごしている。
魔人と魔物のせいで国自体が疲弊し、貧しかった。この街も例外ではない。
「そこのお姉ちゃん!! 助けて!!」
サズァンがスラム街と化した街はずれで安宿を取ろうとしていたら、小さな女の子に声を掛けられた。
「どうしたの?」
「友達が死んじゃいそうなの!! 助けて!!」
「っ、わかったわ!」
ただ事ではない様子にサズァンは女の子の後を追い、スラムの奥へと入っていった。
やがて、細い路地に着くと、女の子はそこで待ち構えていた青年達の後ろへ隠れる。
「これは、どういう事かしら?」
「姉ちゃん、いい服着てるな。金を置いてってくれよ」
女の子は嘘をついていたらしい。最初からこうする事が目的だったのだ。
「痛いのは嫌だろ? 死にたくないだろ?」
青年達はナイフをチラつかせてサズァンの元へやってくる。