魔人と少女 1
文字数 569文字
(イラスト:佳川先生)
目覚めたばかりだが、今回もあっさり上手く行った。
人間も亜人も何故こうも非力で愚かなのだろうか。
ムツヤが攫われる前、城の上空に現れたラメルは魅了の魔法を使い、ものの数秒でその場を占領してしまった。
「さーて、冒険でもしようかなー」
堂々と正面から入ったラメルを使用人達は深々と頭を下げて出迎える。
その時、ラメルは気配を感じ取った。自分の魅了の魔法が利いていない者が居る。
今日も目が覚めてしまった。また死ねなかった。
体中の傷が痛む。
自分は何のために生きているのだろうか。
重い地下室のドアが開いて、光が差し込む。
憎い憎い城主様がやって来る。そして今日も拷問の始まりだ。
足音が城主様と違う事に少女は気付いた。暗闇の中、敏感になった耳が捉えたのはヒールのコツコツという音だ。
「こーんな所に隠れてたんだー」
そう言うと目の前の人影はパチンと音を鳴らす。同時に眩しい光が辺りを照らした。
その光の中から現れたのは、優しい笑顔をした美しい女性だ。一瞬女神にさえ見えた。
ドレスを着ているので城主様と同じ貴族なのだろうか。
「あなたは……」
「私は、ラメル・キャ。魔人よ」
貴族でも女神でも魔人でも何でもいい。少女の願いは1つだけだった。
「お願いです……」
「お願いです!! わだじを!! わだしを殺して下さい!!!!!」