水面下 8

文字数 1,002文字

 ムツヤ達は、イタヤ達と足並みを揃えるために街に宿泊していた。

「アシノさん、明日には合流できそうだぜ!」

 呼び出したイタヤはそう言っている。

「私達が、黎明の呼び手について調べた範囲の情報を話します」

 トチノハが言うので、皆がその話を聞いた。

「首謀者の魔人ナツヤは、レイード地方の魔石採掘場にて違法な環境下で働かされていたようです」

「違法か……」

 イタヤがポツリと呟く。

「えぇ、それこそ扱いは奴隷のようだったらしいです」

 そこまで聞いて勇者たちは黙ってしまう。

「そこで裏の道具を使い、反逆を起こし、採掘場を管理していた貴族を襲い、街も襲ったようです」

「何か、救いのない話ですね……」

 サツキは俯いて言った。

「あぁ、気分の悪い話だ」

 アシノが言うと、イタヤも悔しそうに言う。

「そうですね、俺達勇者が気付いてやれれば防げたかもしれない」

「勇者はあくまで魔人や魔物と戦うもの。それは国や行政の仕事ですよ」

 トチノハが言うと、イタヤは言葉を返す。

「意外だな、気を悪くしたらすまないが、アンタはこういう人間に同情すると思っていたよ」

「いえ、同情はしていますよ国を変えたい気持ちは私にもあります。彼らのような存在を産まないために」

 そこまで言った後に続けてトチノハは言う。

「ただ、今の彼らは暴走して非情に危険な集団です。魔人ナツヤが裏の道具を使いこなせるようになる前に、止めなくてはいけない」

「だな、どんな背景があろうと、罪もない人を殺して良い事にはならない」

 イタヤが言うと、トチノハ以外が皆うなずいた。そして、勇者たちの会合は終わる。

「なーんか、今回の敵は後味が悪いわね」

 勇者たちの話を黙って聞いていたルーがそう話し始めた。

「あぁ、私もそう思う」

「ナツヤさんって人、かわいそうですね……」

 ユモトが言うと、アシノは嗜める。

「だからって同情はするな。戦いに影響が出る」

 同じことを考えていたモモもユモトと共に頷いた。

「ムツヤ、魔物を操る裏の道具に心当たりは?」

 アシノが聞くが、返事がない。ムツヤは心ここにあらずといった感じだ。

「ムツヤ、しっかりしろ」

「あ、すみまぜん! 魔物を操る道具はいくつかありまず!!」

 そんなムツヤの心情を見透かしたようにアシノは話す。

「裏の道具の責任はお前が感じる必要はない。道具に善悪はない。使う人間が悪いんだ」

「はい……」

 アシノの言葉を受けても、ムツヤの心が晴れることは無かった。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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