VSラメル 6

文字数 1,687文字

 少し時間は遡り、ミシロは瓦礫に埋るラメルの元へと走っていた。

「ラメル様!!」

 叫ぶとラメルが瓦礫から飛び出る。体に傷を負っていないが、服はボロボロだ。

「キミ、カバン取られちゃったね?」

 そう言われるとミシロはビクッとする。ラメルは魔法で服を修繕しながらこちらへコツコツと歩いてきた。

「まぁいいや、それが目的だし」

 叱るでもなくラメルは言う。

「えっ、どういう事ですか?」

「また開くようになったら奪えば良いだけだもん」

 あっけらかんとラメルが言い、怒られなくて内心ミシロはホッとしていた。

「そんな事より疲れちゃった。お城で休憩しよ?」

「えっ、あ、はい!!」

 崩れかけた城に2人は帰っていく。


 あっという間に3日が過ぎた。ムツヤ達は何もない平原に陣取る。

「あっ、カバンが開きまじだ!!」

「やっとか……」

 ムツヤが言うとアシノが歩み寄ってきた。

「奴は魅了の魔法を持っています。そこでこれを皆さんに配ります」

「これは……」

 イタヤ達は手にとって訝しげな顔をするが、アシノがふざけている訳では無いだろう。

「もう一つ、ムツヤ!! 例のぶつけるとモンスターが消滅する玉を出せ」

「わがりまじだ!!」

 取り出されたのは手のひら大の緑色のガラス玉だ。

「これを持てるだけ持ちましょう」

 その時、地平線の彼方から何かが飛んでくるのをムツヤは千里眼で見つけた。

「来まず!!」

「よし…… 全員ハリセンは持ったな!! 行くぞォ!!」

 武器とハリセンを装備して皆は魔人を待ち構える。

 ラメルはミシロを抱きかかえて飛行していた。

 あまりの速さにミシロはギュッと目を瞑り、必死にラメルに抱きついている。

 ムツヤ達の前まで来ると、スピードを落としてふわりと着地した。


 開幕、ラメルは魅了の魔法を使った。ムツヤとサワ以外は強力なそれに掛かり、こちらに武器を向ける。

 ムツヤは圧倒的な速さで皆の頭をハリセンで叩いて回った。

「っつ、しまった。操られたか……、サンキュームツヤくん」

 イタヤは軽く言ったが、一瞬でも操られた自分の未熟さを恥じる。

「ダーリン、今からでも私の仲間になるつもりはない?」

「絶対に断る!!」

「そう……、じゃあ」

「死んじゃえ」

 ラメルが拳を振りかざしながら飛んできた。カウンターに緑の玉を投げつけるが、いとも簡単にかわされてしまう。緑色の玉は地面に落ちると煙となって消えた。

 ムツヤは魔剣ムゲンジゴクを取り出して、そのの拳を受け止める。辺りに金属同士が激しくぶつかりあったような音が響き、業火が吹き出た。

 目にも留まらぬ一進一退の攻防を繰り広げながら、ムツヤはスキを見て緑色の玉を投げつける。

「あっはははは!! 何をしようとしてるか知らないけど無駄だよぉ!?」

 ラメルはバサッと飛んでそれを避ける。その背後からイタヤが迫り、聖剣ロネーゼでラメルを斬りつけようとしたが。

「見えてるよ、おじさん」

 くるりと反転したラメルが打ち出した無数の光の玉を数発被弾してしまう。

「っぐ、結構痛いじゃないかお嬢ちゃん」

 当たり前だ。一般人であれば粉々になっているような威力だ。空高く舞い上がったラメルをウリハとサワが地上から雷を打ち出して捕捉する。

「無駄だって言ってんじゃん」

 少しも動じず、その身で雷を受けるも、傷一つ負っていない。スゥーッと地上に降りて来て余裕そうな笑みを浮かべた。

「今よ、皆離れて!!」

 ルーの言葉と同時に前線のメンバーはラメルから離れた。ずらりと精霊がラメルを取り囲む。

「こんなの無駄だって分からないの?」

 そう、ラメルの言う通りだった。本来であれば魔人相手に焼け石に水程度なのだが……。

 精霊たちは体から緑色の玉を取り出した。そして一斉に投げる。

「小賢しいよ!!」

 ラメルは飛び上がり、無詠唱で風魔法を出すと、緑色の玉を吹き飛ばした。だが、その一瞬のスキをムツヤは待っていた。

 音もなく、ムツヤはラメルを斜めに切りつけた。傷口からは血の代わりに業火が吹き出る。

「ラメル様!!」

 それを遠くから見てみたミシロは思わず叫ぶ。

 ラメルは傷を庇うでもなく、ムツヤの方を振り返って。

 カバンを掴んだ。
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登場人物紹介

名前:ムツヤ・バックカントリー


 裏ダンジョンを遊び場にする主人公、ちょっと頭が残念。

名前:モモ


 オークの女の子

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