身分証明 3
文字数 1,780文字
「冒険者になる方法は2つあるってのは知ってるかい?」
ムツヤはその言葉を聞いて顔を上げた。するとゴラテはニヤリと笑う。
「そのオークのねぇちゃんみたいに手続きをする方法とあと一つ」
ここでゴラテは勿体ぶって一呼吸を入れる。その数秒がムツヤにはとても長く感じた。
「冒険者として10年以上活動している奴の推薦状があれば身分証なんてもんが無くてもなれるんだ」
冒険者になれる可能性があると聞いてムツヤの顔はパーッと明るくなる。モモの方はまだ懐疑心があるようだったが。
「そ、それじゃあお願いします、俺に推薦状を下さい!」
ムツヤはバッとゴラテに頭を下げる、それを見てゴラテはガッハッハと笑った。
「悪いが、条件がある。3つの内どれでも良い、1つは百万バレシを俺に渡すこと」
そこまで聞いてモモはため息を付いて話を遮る。
百万バレシなどという大金を吹っ掛けてくるなんて、この男はこちらを馬鹿にしに来たのか、それとも弱みにつけ込む詐欺師まがいかだと思った。
「ムツヤ殿、これ以上耳を貸すのは無駄です」
「まぁ待て、推薦状を書いて冒険者になった奴が何か問題を起こしたら俺も責任を取らされるんだぞ? これぐらいの金は当たり前だと思うがな」
顎下に蓄えたヒゲを触りながらゴラテはニヤニヤと笑っている。モモは不快そうにそれを見ていた。
「それだったら別の良心的な冒険者に頼むことにする」
「それも上手くいくかな? ワケありの人間なんてカモにされるのがオチだぞ? それに良心的な冒険者なら目の前にいるだろう」
「それはどこにいるのか教えてもらいたいものだな」
モモはハッと笑ってゴラテに対し一歩も譲らない。するとゴラテはわざとらしく参った参ったと両手を上げてみた。
「それじゃ2年間『ウソクヤ』の葉っぱをカゴいっぱいに俺に届けてくれ、そうしたら推薦状を書いても良い」
少しハードルが下がった、ウソクヤの葉は解熱・鎮痛の効果がある薬草だ。森へ入ればそれなりに生えているので難しいことではない。
「2年も待でません! 俺には夢があるんです!」
ムツヤは少し大きな声でそう言った。その言葉を待ってましたとばかりにゴラテはまた笑う。
「よし、それじゃ取っておきの方法がある。とある森にある『ユーカの実』を俺と一緒に、1ヶ月だけでいい。探す手伝いをしてくれたら推薦状をやろう」
モモは聞いたことがあった。ユーカの実は万病に効く言われている。それも伝説などではなく実在するらしいが本物は見たことがない。
「冒険者としての経験にもなるし悪い話じゃ無いとは思うんだがな」
「それで、それでお願いします!」
ムツヤの中ではユーカの実を探すことはもう決定事項らしい。モモはため息が出そうになるが、自分は従者だと言い聞かせムツヤの意見に同意することにした。
「ムツヤ殿がそう言われるのであれば、わかりました」
「決まりだな、明日の5時にこのギルドの入り口に集合だ。ユーカの実が出来る時期は決まっていて、痛みが早いから幻の実って事になってるんだ。俺の調べた秘密の場所ではここ数日で実が成るはずだ」
そう言い終わった後にゴラテはムツヤに手を差し伸ばして来る。
「改めて、俺はゴラテ・サンドパイルだ。よろしく頼むぞ」
ゴラテのさっきまでの怪しい雰囲気が急に消え去り、面倒見の良さそうな中年の様になる。何か絶対に裏はあるにせよ、それでモモの警戒心も少しはほぐれたようだった。
モモとムツヤは宿屋へと戻った。そこで新たな問題に直面した、というよりは思い出した。この部屋にはセミダブルのベッドが1つだけしか無い。
宿屋のグネばあさんにもう一つ部屋を借りようとしてみたがどこも満室だよと断られる。
「なんだいあんたら、恋人どうしならいいだろう?」
「だーかーらー! それは勘違いでムツヤ殿とはそういう関係ではない!」
「どっちにしろ良いじゃないかい、細かいことは」
ヒッヒッヒと老いた魔女みたいにグネばあさんは笑ってまた二人を出迎えた。
「いや、おばあさん。オークと人間は恋愛をしないらしいですよ」
ムツヤがフォローに入るが、より大きくグネばあさんは笑って返す。
「愛があれば種族も年も関係ないんだよお兄ちゃん」
「そうなんでずか!?」
「もう良いから部屋へ行きましょう」
そう言ってモモはムツヤの手を引いた、部屋に入るとまたセミダブルのベッドが出迎えてくれた。
ムツヤはその言葉を聞いて顔を上げた。するとゴラテはニヤリと笑う。
「そのオークのねぇちゃんみたいに手続きをする方法とあと一つ」
ここでゴラテは勿体ぶって一呼吸を入れる。その数秒がムツヤにはとても長く感じた。
「冒険者として10年以上活動している奴の推薦状があれば身分証なんてもんが無くてもなれるんだ」
冒険者になれる可能性があると聞いてムツヤの顔はパーッと明るくなる。モモの方はまだ懐疑心があるようだったが。
「そ、それじゃあお願いします、俺に推薦状を下さい!」
ムツヤはバッとゴラテに頭を下げる、それを見てゴラテはガッハッハと笑った。
「悪いが、条件がある。3つの内どれでも良い、1つは百万バレシを俺に渡すこと」
そこまで聞いてモモはため息を付いて話を遮る。
百万バレシなどという大金を吹っ掛けてくるなんて、この男はこちらを馬鹿にしに来たのか、それとも弱みにつけ込む詐欺師まがいかだと思った。
「ムツヤ殿、これ以上耳を貸すのは無駄です」
「まぁ待て、推薦状を書いて冒険者になった奴が何か問題を起こしたら俺も責任を取らされるんだぞ? これぐらいの金は当たり前だと思うがな」
顎下に蓄えたヒゲを触りながらゴラテはニヤニヤと笑っている。モモは不快そうにそれを見ていた。
「それだったら別の良心的な冒険者に頼むことにする」
「それも上手くいくかな? ワケありの人間なんてカモにされるのがオチだぞ? それに良心的な冒険者なら目の前にいるだろう」
「それはどこにいるのか教えてもらいたいものだな」
モモはハッと笑ってゴラテに対し一歩も譲らない。するとゴラテはわざとらしく参った参ったと両手を上げてみた。
「それじゃ2年間『ウソクヤ』の葉っぱをカゴいっぱいに俺に届けてくれ、そうしたら推薦状を書いても良い」
少しハードルが下がった、ウソクヤの葉は解熱・鎮痛の効果がある薬草だ。森へ入ればそれなりに生えているので難しいことではない。
「2年も待でません! 俺には夢があるんです!」
ムツヤは少し大きな声でそう言った。その言葉を待ってましたとばかりにゴラテはまた笑う。
「よし、それじゃ取っておきの方法がある。とある森にある『ユーカの実』を俺と一緒に、1ヶ月だけでいい。探す手伝いをしてくれたら推薦状をやろう」
モモは聞いたことがあった。ユーカの実は万病に効く言われている。それも伝説などではなく実在するらしいが本物は見たことがない。
「冒険者としての経験にもなるし悪い話じゃ無いとは思うんだがな」
「それで、それでお願いします!」
ムツヤの中ではユーカの実を探すことはもう決定事項らしい。モモはため息が出そうになるが、自分は従者だと言い聞かせムツヤの意見に同意することにした。
「ムツヤ殿がそう言われるのであれば、わかりました」
「決まりだな、明日の5時にこのギルドの入り口に集合だ。ユーカの実が出来る時期は決まっていて、痛みが早いから幻の実って事になってるんだ。俺の調べた秘密の場所ではここ数日で実が成るはずだ」
そう言い終わった後にゴラテはムツヤに手を差し伸ばして来る。
「改めて、俺はゴラテ・サンドパイルだ。よろしく頼むぞ」
ゴラテのさっきまでの怪しい雰囲気が急に消え去り、面倒見の良さそうな中年の様になる。何か絶対に裏はあるにせよ、それでモモの警戒心も少しはほぐれたようだった。
モモとムツヤは宿屋へと戻った。そこで新たな問題に直面した、というよりは思い出した。この部屋にはセミダブルのベッドが1つだけしか無い。
宿屋のグネばあさんにもう一つ部屋を借りようとしてみたがどこも満室だよと断られる。
「なんだいあんたら、恋人どうしならいいだろう?」
「だーかーらー! それは勘違いでムツヤ殿とはそういう関係ではない!」
「どっちにしろ良いじゃないかい、細かいことは」
ヒッヒッヒと老いた魔女みたいにグネばあさんは笑ってまた二人を出迎えた。
「いや、おばあさん。オークと人間は恋愛をしないらしいですよ」
ムツヤがフォローに入るが、より大きくグネばあさんは笑って返す。
「愛があれば種族も年も関係ないんだよお兄ちゃん」
「そうなんでずか!?」
「もう良いから部屋へ行きましょう」
そう言ってモモはムツヤの手を引いた、部屋に入るとまたセミダブルのベッドが出迎えてくれた。