囚われの田舎者 3
文字数 1,085文字
(イラスト:太極剣先生)
「なに固まってんだい、行くよ!!」
ウリハの声でイタヤはハッと我に返る。その後ろではサワとユモトが魔法の詠唱を始めていた。
「貫け、雷よ!!!」
二本の雷が地上から空へ昇ってゆく。サワの雷はユモトが打った物の数倍太かったが、それらは混じり合い一本の雷になった。
ウリハはラメルの足元まで走ると、両足に魔力を込め、高く飛んでから地面を踏み抜いた。
ブワッと風が舞い上がり、ウリハの体は天高く飛んでいく。
それと同時に雷がラメルを貫き、ウリハが下から追撃で真っ二つにした。
ラメルの体は光と共に消えていき、街からは歓声が上がるが、勇者と仲間たちはその光景に疑問を抱く。
そして、確信していた。
魔人がこれぐらいで死ぬはずが無いと。
「分身体か、撤退したか、ですかね」
イタヤが言うとアシノは「えぇ、おそらくは」と答えた。
「分身だとして、分身体でここまでの攻撃が出来るのか……」
街中に振り注いだ火の玉を思い出してイタヤは言った。今は街の衛兵が主導して、住民と共に消火活動をしている。
しばらくして、街は鎮火し終えたと衛兵から報告があった。建物が数件燃え、けが人も出たが、死者は出なかったらしい。
「私達が訪れたことで街を危険に巻き込んでしまいました。申し訳ありません」
アシノが街の議員に謝罪をする。
「いえいえ、勇者様方は魔人から街をお守り下さいました」
再度一礼してアシノ達は街を出た。自分たちが居れば、また魔人が来るかもしれない。
ムツヤの裏の道具である馬はまだまだ元気そうだが、イタヤ達の馬車を引く馬は限界が近そうだった。
なので、馬を借り、また月明かりの中ムツヤが囚われているであろう貴族の城を目指す。
裏の道具の反応である赤い点はずっと動いていない。
しばらく馬車を走らせると、人気のない草原に出た。
ムツヤの持っている家の出る本を使えれば楽なのだろうが、持ち合わせていないので、テントを設営する。
「地図を見るに、あの山の
ルーが遠くを見つめて言う。サワが千里眼を使うと、確かに城が見えた。
「何だってこんな辺鄙な場所に城を建てるかね。金持ちの考えることはわからんわ」
イタヤはため息をついて言う。
「サワ、城の様子はどうだ?」
ウリハが言うとサワが答えた。
「明かりは付いているし、人の気配もしますね」
「城の人間が魔人に脅されて使われてるのか?」
イタヤが言うとアシノが腕を組んで話した。
「そうかも知れませんね」
イタヤは何か相槌を打つ代わりに拳を固く握って城の方角を見る。
夜が